闇短

□闇の華・番外編
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「やっ・・・父様やめてっっ・・・」


そう涙目で懇願する姫君に、邵可は無言で姫君が身に纏う着物を脱がしていく・・・



事の始まりは数刻前・・・



出仕が休みの今日は頼んでいた書物を取りに出掛け、

秀麗と静蘭は既に朝早くから賃仕事にそれぞれ出掛けており、


姫君もまた、邵可が出掛けた少し後に出掛けていた・・・のだが・・・・・・


邵可がお目当ての書物を抱え邸に足を踏み入れると・・・


足を踏み入れた直ぐのところからでも、遠目に見れる、
淋しい木々か立ち並ぶ中の一つの幹に背を預け立っている姫君を発見した。



邵可は立ち尽くしその現状をただ見ている・・・・・・



そう・・・・・・


・・・・・・見知らぬ男に胸を鷲掴みにされ、なおかつ口づけを交わしていたのだ・・・


見た限り嫌がる素振りなど見せる事なく相手の男にされるがままである。



やがて・・・

男は空いた手で己の下腹部へと手をのばすのを目に入れると、

邵可は風のような速さで男に近づくと、

シュッ!


男の首筋に手刀を添えた。



ビクッ...「とぅっ...さっ...ま...」

ビクッ・・・

姫君は目の前に現れた邵可に驚き、

男もまた、自らの首筋に冷たく添えられた刃に、


「ひえっっ」

不恰好な声をあげた。



(弱い...)

己の目を掻い潜り姫君と接触した男に、僅かばかりの警戒をしていたが...

見た目を裏切らない弱さのこの男を、
様子見などせずに、さっさと引き剥がせばよかったと、内心舌打ちをした。


「その汚い手を放せっ」

背筋がさらに冷えるような声で男にそう言うと、


男は唾をのみ込み、両手をあげた・・・

「おっ俺は・・・」


「黙れっ、誰が話していいと言った・・・こっちへ来い」

男の襟首を掴み刃を添えたまま、邸の中へと連れて行く。


「父様っ、この人はっっ・・・」


前を歩く邵可にそう姫君は口を開くが、


ジロリ...

無言のまま、開かれた邵可の紅い目で視られ、続く後の言葉をのみ込んだ...



長い沈黙と、底冷えするような張りつめた空気にさらされながら、
姫君の部屋へと三人がつくと、
男の襟首を強い力で掴んだまま、椅子を部屋の中央へ置くと、


「座れっ!」

さほど声を張っているわけでもないのにもかかわらず・・・
存在感、威圧感がだだ漏れな有無を言わさぬ支配者の貫禄があった。



(怒っている...)

姫君は父の怒気を肌で感じ息をのんだ・・・・・・



邵可は男が大人しく椅子に座るのを見届けると、
何処から出したのか・・・縄で椅子に縛りつけた・・・



「さてと・・・」

椅子に縛りつけられる男を冷徹に見下ろしながら・・・


「君は彼女とはどういう関係だい?」



「ひぇっっ・・・おっおお俺・・・わわ私は、その女っ・・・ああその方が・・・わわわ紅家の方と関わりがあるとは知らずっっ」


馬鹿な男の発言、そこかしこに怒りが誘発される・・・


「ああ、彼女はあんまり紅の服を極力着ないからね・・・」

実際、黎深や藍州・・・主だった場所、時だと紅の衣に袖を通すが、
家にいる時や普段の生活の中ではほとんど、そこいらの町娘達と変わらぬ出で立ちで過ごしている。


紅家だからなんだと言うのだ・・・
そんなちっちゃな男に自分の好いてる者と口づけを交わされていた事に腹腸が煮えかえる。



「因みに彼女は紅家に関わりが有るどころか、私の娘だよ。」


「ひぇっっっ」

そう何度目か分からぬ声をあげ、
自分のしでかした事の大きさに顔を真っ青にさせた・・・


「それに・・・・・・」

言葉をためる邵可に、男はゴクリと唾をのむ。



「私の女だ」


男は衝撃の事実に、最早、思考回路が止まり、


姫君も邵可から発せられた言の葉に・・・頭がぼやける・・・


「私の女に手を出すとはいい度胸だ・・・
じっくりと私の手で鳴かされる所を見ているといい・・・」

そう言って、縛りつけた男をそのままに・・・
立ち尽くしている姫君を寝台へ引きずり込むと馬乗りになり、

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