紅華
□紅華4
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春の穏やかな昼下がり、優しい風が頬を撫で、今日も元気に紅紅華は
壁に張り付いている・・・。
「あっちにいきたいんでしょっ!」
「っいや」
「嘘だもん、どうせみんなみんな紅華の事わすれちゃったんでしょ」
「そんなことあるわけないじゃないかぁ」
そんな事を言いつつも内心どうしたものか、おろおろと困ってしまっているのは、
ここの所秀麗の体調が心配で毎日様子を見に来ていた男、紅黎深だ。
昨日まで紅華は毎日秀麗の様子を伝えてくれていたのだが、
今日貴陽別邸(邵可邸)に着くやいなや、黎深が工具で空けた壁の覗き穴からこんなことを言うのだ。
秀麗が風邪を拗らせたと報せを聞いてここ数日通い詰めていたが、
もしかしたら紅華は兄上や義姉上、
あのいけすかない家人までもに、暫く構って貰えず寂しいのではないか・・・と
そう黎深は結論付け門番に現金を渡し、紅華を・・・
ツレサッタ.....
いつもにこにこと、元気で愛らしくて、
大好きな目に入れても(断じて)痛くない!!
私の紅華〜状態の黎深に、もはや正常な判断は出来ない。
あんなにも切なそうな顔を見てしまっては・・・今にも泣きそうなあんな顔を・・・
よって敬愛してやまない兄上に告げることも忘れ、ツレサッタ
人拐いも真っ青なはやわざで・・・
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