闇中

□揺れる心
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「うそ・・・・・・」


今にも倒れてしまいそうな程に愛しき姫は顔色を蒼白に変えると、
目の前の男に視線を向けた。


「君は彼の大事な妹みたいなものだからね、
教えなくっちゃと思って。」

雨降ってるケド一人で帰れる?僕はちょっと用事があるから・・・、

そう言って男は愛しき姫を置いてカフェを後にした。
















ザァァァ....





いつしか降り出していた雨音の強さに手元から視線を窓へ向け、

蒼白なままゆっくりと席を立ち、店を出たが、


一歩出たところで傘を持ち合わせていない事に、その足は店先で止まった。





幾つも頬を流れ伝う雨さえ気にならないくらい、愛しき姫は今日初めて会った男の言葉と、手渡されたものに思考を奪われ。

薄暗い影を落とす・・・。




見せてもらったものは見たこともない黒い車。窓さえも黒いスモークがあり中は分からなかった・・・。


「けどね、特殊なカメラで中を撮るとね・・・」


最初見せてもらった写真とほぼ同じアングルから撮られたそれには、


ーーうそ・・・・・・


見知らぬ女の人と、今朝もいつものように笑顔で出掛けて行った夫の姿が写っていた。



そして、あとはもうありきたりな話のように・・・・・・




ホテル街へと車が消えて行くまでが、順に追って写真に写し出されていた。




「いくら人望が厚いからって、君みたいな可愛い妻を夜一人にさせてまで出ていく用ってなんだろうね?」


雨が降る中、店に出入りする客に顔を何度見られようと、
愛しき姫には頬を伝う雨を止める術など持たなかった・・・。





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