優護シリーズ短編

□番外編・有沢一樹の奔走
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あたしは空座第一高校2年2組、有沢一樹。


簡単に自己紹介すると、女子バスケ部で4番やってる普通の女子高生。

…ああ、もうひとつ。

あたしと同じ日に生まれた兄貴がいる。

そ、有沢一希。

あたしが言うのもなんだけど、結構なシスコンだよね。


まぁそんな自己紹介のあたしは、普通に平凡に生活してた。

…はずなんだけどね。


ある日の午後。

2年2組で午後の授業受けて、珍しく午後部もない放課後。

「結姫!一緒に帰ろ」
「あ、うん!…あ、ちょっと待ってね一樹ちゃん」
まだ6限目のリーダーの板書をしていた結姫は、顔を上げてあたしを見た。
「オッケー、じゃあたし1組行って翔吾と優護呼んで来るから」
「あ、わかったぁ」
あたしはそう言うとカバンを自分の机の上に置いて2組を出て行った。



「翔吾ー!帰れる?」
1組の入り口。
…なんてゆうか、一応先に言っとくと1組は男子クラス。
当然、あたしが1組に行くと男子にガン見されるわけ。

「おー、一樹!わかったあと3分で優護とそっち行くから待っててくれ!」
翔吾がそう言うと、1組の彼女いない歴17年のヤツらが羨ましげに翔吾とあたしを見た。
…そんな目で見んなっての。
「オッケー、2組で待ってる」
あたしはそう言うと結姫がいる2組に戻った。


「結姫!ノート書けた?」
「あ、うん!ごめんね一樹ちゃん!」
あたしが2組に戻ると、結姫はちょうどノートと教科書類をカバンに入れてるとこだった。
「…あれ?結姫キーホルダー増えた?」
あたしは結姫のカバンの上につくキーホルダーを手に取る。
前からついてたあたしとおそろいのマスコットの他に、ピンクのハートキーホルダーがついていた。
「あ…うん。これね…」
あたしがそう言うと、結姫はちょっとはにかんだような顔でキーホルダーを手に取った。
「これ持ってると片思いの恋がうまくいくんだって。ほんとは一樹ちゃんにもすすめたかったんだけど、一樹ちゃん両思いだもんね」
結姫はそう言うと、ふっと苦笑した。
「あ、そっか…優護ねー…いつ気付くんだろうね?」
もう何ヵ月目だっけ?
まぁ他人のことには敏感なくせに自分のことになると鈍感になるのが優護だし、そのへんはしょうがないな。
「…でもいいの。叶わない恋でも、黒崎くんのそばで黒崎くんを守れたらそれで」
結姫はそう言ってはにかんだ。
「ん…そっか!」
うん、結姫がそう言うならあたしは何もしない方がいいかな。
…こんな強い言葉この子の口から聞いたの、初めてだから。






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