『小さなお話』

□『グレタの友達』 
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      ミリアの家族は、両親と、弟8才5才。5人家族だ。

  小さなアパートで暮らしていた。明るい家族だ、暗い顔はひとつも見せない。

   『今日はね、癒しの魔術の凄い人を連れて来たの。

   ユーリ、グレタのおと・・・ じゃなくて、遠い親戚のお兄さん。』

  べッドで寝ているミリアに挨拶をして、ユーリはミリアの手を握る。

   『ミリア、始めまして。俺はユーリ。グレタと友達なんだって、今日から

   俺も友達に加えてもらっていいかな?』

   『もちろんよ。グレタの友達は、私にも友達よ。』

    苦しそうな声で、一生懸命に答えてくれる。

    グレタの言っていた通り、綺麗な瞳をした女の子だ。

   『ありがとう。ミリア。』


    ユーリがミリアの手を、両手で暖かく包む。

   ふいに、2人の周りが光だす。柔らかい、優しい光。

   部屋全体が暖かい光で、いっぱいになる。

   遊んでいた兄弟達も、何かを感じてるようだ。

   ミリアの父親と母親も、部屋の空気が変わった事を感じて

   周辺を見回している。


   ユーリの魔術は、暖かい。




    夕方から、1時間程、ミリアの家仁いた。

   ユーリは、とても疲れていたが、困惑の方が大きかった。

   グレタに、どう話せばいいのか?

   この、感じた事を。

   『坊っちゃん、隠し事はダメですよ。グレタの大切なお友達の事は、

   ちゃんと、伝えなきゃ。』

    ヨザックに、促がされて、帰り道グレタに話をする決心をした。

   大丈夫、グレタは強い子だ。受け止められる。




    『ダメなんだ。グレタ。魔術も効かない。

   よく聞いて、人には定められた時間があるんだ。

   ミリアはね、自分の運命をもうわかってる。

   グレタはミリアの本当の友達だし、俺の娘だろ?

   俺も悩んだんだよ。でも、ミリアがこう言ったんだ。

   グレタには、知っていて欲しい。

   意味、わかるよね?』


    『ユーリ、もう、治るらないの?』

    『あァ・・・。だけど、魔術で 出来ることがひとつ

    あるんだ。ミリアの、痛みは軽く出来ると思う。』



   それから、毎日できるだけ、ミリアに会いに行った。

   出会ったのが、春〜それから、秋になる頃。

   とうとう、ミリアは旅立ってしまった。



    グレタもユーリも、身体中の水分が無くなるのではないか?

   と、思うほど泣いた。大切な親友を、失った。

   城の皆、コンラッドもヴォルフラムもグウェンダルもギュンターも

   事情は、知っていたけれど下手に慰めるよりは・・・と、

   そっとしておいてくれた。

   そんな時、慰めてくれたのがアニシナだった。


    『わたくしも、ジュリアが亡くなった時は泣きました。

   ですが、人はみな、いつかは死ぬものです。

   程よく年をとり、寿命が尽きての旅立ちは、喜ばしい事ですが、

   ジュリアや、ミリアさんのように若くして亡くなるのはつらいものです。

   でも、希望もあるのです。』

     『希望?』

   『えぇ。陛下の存在が希望なのです。』

    アニシナさんは、誰にも見せた事が無いような、優しい笑顔で。

   『陛下はじジュリアの生まれ変わりです。始めてお会いした時、

   どうして、あんなになつかしかったのか?

   理由は、つい最近わかりましたが。

   魂は、永遠なのですね。また、出会えるのですよ。

   お互い、現在のこの人生とは限りませんが。

   陛下、わかっていますよ。生まれ変わると別人。


   だけど、陛下に出会えて、みんながどんなに幸せか!』


   『じゃ、ミリアにはまた遭えるんだよね。』

   『そうですよ。ただ、もっとずっと先。

   グレタが別の人になった時かも知れませんがね。』


    グレタがわかってくれたかどうかは、わからない。

   だけど、少しずつ元気になっていった。

   ミリアの家にも、時々出かけて行っては、弟達とも

   遊んだりしている。




  

  
    



  
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