『オリジナルSS』
□『再生』
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『美里!今日、一諸に帰ろうよ。帰りにさクレープ食べよう。』
その声に気がついて周りを見渡すと、人がたくさん行き交っている。
美里?クレープ?何の事だろう。
『美里、昨日約束したでしょう。
テスト終わったし、行こうね!』
『えぇ、そうね。約束したわね。』
ここは、昔の地球なのだろうか?
見渡すと《男》がいるのがわかる。
たくさん居る。
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かすかに残っていた細胞は、人間の物だったらしい。記憶らしき物まで再現出来たのは初めてだ。
細胞は、栄養液に浮かんでいる。
まるで、夢でも見ているかのように。
細胞は生きているが、生きていない。
微弱な電磁波を毎日与えていると、その細胞がフルっと動いた。
細胞の記憶は、形をなさないものが多い。
別の容器に移し変えて、記憶を取り出せるかどうか、ナノシステムにかけてみた。
とても長い時間、10年以上かかった。
とても細い電気信号を取り出すことが出来た。
映像化も、自分の脳へ直接送りこむようにした。
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美里と呼ばれた。
友達という彼女は誰?
目をこらすと、その友達が見えた。
見慣れているマリア達(仲間)とは違う。
初めて見る顔だ。
『美味しい。』
クレープも味わう事ができた。
ただの細胞の記憶なのに。
たくさんの人間を感じる事が出来る。
遠い過去の地球。
今は、こんな場所はない。
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マリアでは無く、美里、この細胞の名前らしい。
『クローンで再生は出来るかしら?』
『あまり期待しない方がいいわよ。
干からびた細胞からの再生は成功したことはないわ。
私も、後でその記憶を見てみるわ。
でも・・・また、《女》なのね。《男》の細胞でもみつけられればいいのに。』
残念そうな声だ。
『でも、私は研究を続けるわ。』
美里、いつか来てね。
マリア以外のクローンは、かすかな希望。
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2009年2月8日