頂いた素敵小説
□『無二の王』
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鉛のように重い瞼をほんの少し持ち上げた・・・・・
はっきりしないながらも、僅かばかり視界が広がる。
俺は・・・・夢を見ているのだろうか・・・・・。
指一本動かすことすらままならない俺の周りを・・・・
夢にまで見続けた懐かしい人たちの顔々・・・・・・・・が心配げに覗き込んでいる。
「ばか者が・・・・どうしてお前というヤツは・・・・・」
兄は苦悩に満ちたように眉をきつく寄せている。
「コンラート・・・・貴方はどうして・・・・・どこまで自分を傷つければ気が済むのですか?」
かつての師である・・・王佐も心配そうな顔をしている。
「コンラート・・・・コンラート・・・・この・・・・ばかやろう!!何故こんな・・・・・・・・」
俺を蔑んでいるはずの弟まで・・・悔しげに唇を噛んでいる。
痛みと・・・・・・苦痛とが俺の全身を蝕んでいる・・・・はずなのに俺の心の中は非常に穏やかだった。
みんな何故そんなに泣きそうな顔をしてるのだろう・・・・?
俺なんかのためにそんな顔をしないで下さい・・・・。
俺は・・・自らの意志を貫きみんなを傷つけたのだから・・・・
これは自分自身に与えられた運命なのだから・・・・
ここであなた方に別離するのは全て運命なのだから・・・・
俺は・・・・あの方の世を護る為の礎になることを望んだのだから・・・・
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