頂いた素敵小説
□『秘密 de HIMITSU』
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「お〜い!全員乗ったか?!」
渋谷キャプテンの呼びかけに車内の全員から
「おぉ!!」と声が上がる。
「んじゃ・・・・埼玉ブルーライオンズ夏合宿に・・・出発!!」
発車お願いします〜
の声と同時に「あいよ!」という声が運転席からかかって軽快なエンジン音が車内の響き渡った。
渋谷さんがこの春に結成したという草野球チーム『埼玉ブルーライオンズ』はとにかく野球バカの集団だ。
上手い下手はともかくとして・・・
野球がやれれば満足だ!主義の下、
下は中学生から上は社会人・・・・ン年生の大人まで集まって構成されている。
その最年少が・・・ことし中学に入学したばかりの僕・・・・神沢 正だったりする。
このチームのキャプテン&オーナー(?!)は・・・若干15歳・・
いやこの7月29日でめでたく16歳を迎える予定(らしい)の
高校生・・・渋谷有利さんだ。
このチーム一熱くてこのチームで一番野球ことがすごく大好きだ・・・
というか野球のことしか頭にない人らしい
(高校生でありながら草野球チームを構成してしまった辺りにその熱意が見受けられる)
顧問に罵倒された後輩を庇い思いっきり先生をぶん殴って部活を強制退部させられたという
僕が今年入部した野球部に伝わるに逸話の持ち主・・・・
そんな先輩がどんな人なのかすごく気になった僕は・・・・
彼が結成したという草野球チームがすぐ近所の川原のグラウンドで練習しているという話を聞き
覗き見に行った。
バックネット越しに見つけたその姿は想像とは遥かに違っていて・・・・
(だって先生を殴ったっていうくらいだからどんな強面の先輩かと思って
戦々恐々としていたのも事実だったから)
でもそこらにいるようなただのはた迷惑なバカモノともちょっと違う。
キャッチャースタイルのその人はすごく華奢で・・・とてもキャッチャーを務めるような人には見えなくて・・・
だけどマスクの下から現われたその笑顔はすごく人懐っこい感じで温かくて・・・弾けた汗が眩しかった。
とにかく彼は人をひきつけてやまない魅力があるのだ。
「あれ?君・・・野球好きなの?」
じっと見つめていた僕に気づき・・・その人はにこっと明るく笑い僕に話しかけてくれた
「そっかぁ〜・・俺の入れ違いの後輩になるんだ!よろしくなっ!」
差し出された手を思わず掴み・・・
僕はいっぺんにその人の魅力に取り付かれその場でチームへの入団を決意していた。