頂いた素敵小説

□『愉快な渋谷兄弟』
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ゆーちゃああああん!




ドタバタと家を揺らしながら、渋谷家長男であり
俺の兄貴・勝利がノックもなしに走り込んできた。

「なんだよっ、
ノックくらいしろよな」

勝利の勢いにビビりつつも、ハサミは滑らかに
新聞を切り抜いていく。
野球記事のスクラップを続けながら、
扉に仁王立ちをしている勝利に文句を言ったが、
軽く鼻で笑い飛ばされてしまう。

「そんな小さいことを気にするな」

「いや、気にするから」

俺に散々うるさく注意していたというのに、
矛盾したことを言う。

というのも先日、
俺がノックもなしに扉を開けてしまい、薄暗い
室内でギャルゲーの女の子と一方的に会話をしている勝利の姿を
見てしまったのだ。
理解していたとはいえ、ちょっと引いた。

「で、何だよ?」

どうせ、
暇つぶしの嫌がらせをしに来たのだろう。
未来の都知事選で演説する内容を熱く語ったり、
「お兄ちゃん」と呼ばないとTVのリモコンを渡さない、とか。


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