『小さなお話』

□『みんなと別れる時』
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  『みんなと別れる時』(地球編)

 
      どうしたわけか、自分の見た目が全然変化が無い事に、

  気がついた。自分でも、おかしいとは思っていた。

  高校を卒業して、5年。周りは、青年らしく変わって行く。

  
   『渋谷!お前、変わんないな。』

   久しぶりに旧友に会うと、驚きで相手が絶句しているのがわかる。


   さすがに、周りも俺も、異常を自覚した。

   両親、勝利、親戚の人達も、病院へ行け!と、言うようになった。

  15才のまま、変わらない。23才なのに。

  村田は、俺と違って年相応だ。

  2人で街を歩いていると、兄弟に見られてしまう。

  同じ魔族なのに、どうしてだ。

  俺は地球では、暮らせない?

   『君は、魔族の王だからね。成長してないわけじゃ無く、地球の

  5分の1の時間でゆっくり成長してるんだよ。

  地球魔族も地球人より、少しは長生きだけど、魔族程ではないけどね。

  そういや、ボブも変わらないね。ボブは地球魔族だけど、直系だし地球の

  魔王だからね。特別なんだよ。

  ボブの見た目年齢は誤魔化せるけど、君は誤魔化せないね。

  すでに、異常だと騒がれてるだろう?』

   『なんで、村田はちゃんと成長してるんだよ!』

  『僕はね、君みたいに魔術は強くないんだよ。君の力で、眞魔国に

   行けてるし。地球人と同じに年をとるんだ。

   眞魔国でも、人間と同じに年をとって行くと思うよ。』

   俺は、どうすればいいんだ。

   
    地球も眞魔国も、折り合って行けると思っていたのに、ずっと

  両方を行き来して、地球では普通に結婚して・・・・。

  そう、思っていたのに。


    『あくまで、誤魔化しなんだけど、渋谷有利を殺そう。

   戸籍から消すんだ。もちろん、本当に死ぬわけじゃ無い。

   ボブの所でね。交通事故にあって死んだことにするんだ。

   そうすれば、姿の変わらない君がここに居ても、似てる親戚

   で通せるからね。君の性格からして、こんな嘘、付きたくないのは

   わかるよ。だけど、今しか無いんだ。

   あと、10年は持たないよ。』



    スイスへ行き、見事に事故をでっちあげて、俺は死んだことになった。

   もちろん、家族は知っている。親戚の人達には、騙されて貰うことにした。

    『渋谷、こっちにくれば、耐え切れないことが、これからたくさん起こるよ。

   ボブも耐えてきたことだけどね。』


    あれから、10年、20年。地球に来るたびに、おふくろや親父が老けていく

   のがわかる。勝利も兄貴と呼べないほど老けてきた。

   家族なのに、息子なのに会うと、ひ孫にでも会ったかのように喜ぶ。

   勝利も結婚し、孫も何人かいる、いいお爺ちゃんになった。

だけど、俺は15才の姿のままだ。

家族には違いないが、俺は、孫のようにみえるんだろ

う。

   
    そして、定められた人生による別れ。

   親父、おふくろ、さらに時間が立ち、勝利、村田。

   俺は、遠縁の息子、または、知人の息子として見送った。


    地球では、孤独になってしまった。

   昔の面影も全く残さない公園で、考え事をしていた。 


    『あの、渋谷有利さんですか?』

   村田にそっくりの少年が居た。声も同じだ。なつかしい。

   




  
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