『オリジナルSS』
□『再生』
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クローンに魂があるのかどうかはわからない。
人間は、子供を生み出せなくなって200年になる。
生まれて来る子供は、女の子ばかり。
《男》は、寿命が尽きて居なくなってしまった。
自然のつながりによる出産が不可能になってしまった。
人間の人口は、どんどん減っていき種としての全滅を覚悟しなければならない状況になったのだ。
そんな時、未完成だったクローン技術が完成したのだ。
地球に残る人間全ての細胞から、クローンを作ることになった。
人口は減少するばかり、絶望かと思われた時、心を持った人間が生まれた。
そう、その娘は心を持っていた。
魂が宿ったのだ。
マリアと呼ばれて大切に育てられた。
それから、さらに100年。
クローンは短命なので、50才まで生きられなかった。
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『母様が亡くなった。』
棺に横たわる女性の顔をなでる。
『私が大人になったから。』
黒い服を着た女性は、涙を流すことはない。
この未来は、わかっていた事だ。
何度も同じ事を繰り返している。
明日【子宮】に行けば、クローンの赤ん坊に会えるだろう。
その子は、母のクローンだ。
母の心は、その子の所へ行けただろうか?
記憶は何世代にも受け継がれている。
繰り返し、繰り返し。
今度は、私が母になる。
研究を受け継いで、人間が滅びてしまわないように、永遠に同じ事を繰り返す。
いつか、《男》を生み出すまで。
自然に人間が生まれる事にように、研究は続けられる。
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母の亡骸を葬った後、【子宮】に行った。
小さな赤ん坊が居た。
女の子だ。
大切に抱き上げた。
笑顔で笑いかける。
『マリア、またよろしくね。
今度は、私がお母さんよ。』
小さな赤ん坊が、「わかってるよ。」と答えた気がした。
地球の少数のマリア達が、研究を続けて絶滅を逃れていた。
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2009年2月6日