連載『いつかマた!』(旧)
□『気が付いた事実』 8
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手をつかんで、助けようとしたのに。
ユーリは目の前で、土砂と共に消えた。
この事実があまりに惨くて、動けない。
災害に巻き込まれるということは、命も消えたのではないか?
恐怖があまりに大きくて、誰も、動けない。
コンラッドもヴォルフラムもヨザックも、心と身体が氷つくような
悪寒が走り、身が震えた。
叫びたいのに叫ぶ事が出来ない。
だが、もう一つの事実にも気がつく。
手はもう少しで、届いてた。
ユーリが手を、つかめなかった?
掴めなかったのではなく、摑まらなかった!
何故?
命すら危険な状況の中で、何故?
最初から、ユーリの様子は変だった。
彼の言葉には、いつもと違う響が確かにあった。
気がついていたのに。
全ては、意図されていた。この事が起こる、それも知っていたのか?
憶測にすぎないが、これは計画されていた。
呆然とする中、現実を確認する。
『死んだと決まったわけじゃない!さがそう!』
ヴォルフラムが立ち上がる。
『するべき事をする。それからだ。』
『行きましょう。』
土砂の流れた方向へ、3人は向かう。
希望の在る事を、信じて。