『小さなお話』A
□『まがりくねった遠い道』
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戦争の最中、たくさんの仲間が死んでいった。
それは、敵も同じ。
死に支配された世界だった。
愛する人は、失いたくない。
誰だって、そう思う。
あの人を、守りたい。例え結ばれる事が無くても。
友情なんかじゃ無い!
それは、彼女もわかっているはずだ。
あの日、彼女は、おれの所へ来た。
ペンダントをはずして、おれに、つけてくれた。
待っていてくれるものだと、思っていた。
帰ったら、彼女は、その場所にいて待っていてくれるものだと・・・。
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『コンラッド!コンラッド!』
『なんですか。陛下。』
『その呼び方、止めてくれないかな。』
『それは、無理ですね。
きょうは、公式行事ですから、窮屈でも我慢して頂かなくては。』
『何か、冷たいぞ。その、言い方。緊張してるんだよ。
寒いギャグでも良いから、言ってくれ〜!』
顔をふくらませて、怒ってる。
だけど、きょうは、未確認の情報も入っている。
何者かが、ユーリを狙っている。
危険ならば、行事を中止すればよいのだが、あいにく、中止出来る行事では無かった。
隠し事はしない、そういう約束があったので、きょうの行事についての説明はしてある。
ユーリの体型に合わせて作った
鎧も着ていただいた。
見た目からは、判らないが、いつもより、かなり重いものを着ているので、つらいハズだ。
『すげ〜。まるで、○人の★じゃん。』
手に持って、あまりの重さに、驚いていた。
金属を、糸のようにして編んであるので、体型に合わせられた。
『見てて下さいよ。』
剣を振るって、鎧に切りつけてみせた。
剣は、鎧を切り裂く事が出来ない。
『このように、ユーリの身を守れます。重いですが、着て頂けると
助かります。』
『いいよ。着るよ。』
『上下ありますからね。』
『もの凄いトレーニングだと、思えばいいよ。』
『では、これから、行事の日まで着ていただきます。いきなりでは、身体を壊してしまいますからね。』
毎日、少しずつ重くして、身体に慣らしていった。
『俺を暗殺なんて、馬鹿な事を考える奴がいるなあ。』
『これは、貴方の顔・手までは守れません。おれが、貴方の盾となって守ります。』
『ああ、頼むよ。』
寂しい笑顔で、そう言った。
いつもの、明るい笑顔では無く、寂しげな笑顔で。
その笑顔に、ジュリアが重なって見えた。