頂いた素敵小説

□『真実を知る日』
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「こちらへ・・・・グレタ」


ギュンターに促され客間の席を立った。

私の足元から零れる衣擦れの音だけが廊下に小さく響く。

ここは私が育った城だというのに・・・・
今日はひどく緊張し気ばかりが焦っているのが傍から見てもわかるのだろう・・・


「そんな顔されていては陛下がご心配されますよ?グレタ・・・」

先導していたギュンターが困ったような視線を送る。



「え?私そんなすごい顔をしてる?ギュンター」

「えぇ・・・今にも泣き出しそうに・・・・。
貴女は笑顔でいらっしゃい。いかなるときでも・・・・
そのほうが陛下もお喜びになられますから・・・
陛下は貴女の笑顔が一番好いていらっしゃいますよ?」


美貌の王佐がふと振り返り私を見て苦笑する。
その言葉に私は肩を竦めるしか出来なかった。


この人は本当は・・・普段は涼やかな人なのだわ・・・ってことに気づいたのは
いつだったかしら?

だって私はいつもユーリの傍にくっついていたから・・・・
私が目にしていたこの人はかなり『ちょっとやばい汁っぽい人』だったから・・・


ユーリが箱絡みの陰謀に巻き込まれ・・・世界が不穏な空気に包まれていた頃・・・
はグウェンと二人・・・ユーリのいないこの国を護ろうと必死でいらしたわ・・・

あのとき初めて「ギュンターって有能な人だったのね?」と気づいた。

まだ子供だった私はそれをアニシナに話したら
「まぁ・・・・・・陛下のいないときのギュンターは比較的まともやもしれませんね?
でも・・・・本当に・・・男というものは肝心なときにまともに役に立たないことが多々ありますから・・・

女性はそんなことに影響されることなく理知的に行動を起こすべきですよ?グレタ」

と大げさなほどのため息と共に語られて・・・・思わず頷き子供心に納得したことを思い出し・・・
思わずクスッと笑う私をギュンターは「どうしました?」不思議そうに首を傾げる。

そんな彼に「いいえ、なんでもないわ」と首を振り視線を戻し、廊下を先に急ぐ。


やがて・・・奥宮の中でも最奥・・・・豪奢な造りの・・・子供の頃から見慣れている扉の前に立つ。

子供の頃は・・・・ノックも何もなしになんの躊躇もせず飛び込んでいた“扉”・・・
でもこの年でそんなことをするわけにもいかない・・・

両サイドに立っていた衛兵さんが私たちの姿を見てさっと最敬礼をして、中に私たちの来訪を告げる。

入室の許可の低い声が室内から零れてきて・・・・衛兵さんが扉を開けてくれる。

軽く礼をいい
(この辺りはユーリのマネ。
だってユーリってお城の誰にでも分け隔てなく話しかけたり挨拶されたりするんだもの・・・・・)
私はギュンターに伴われてその部屋へと入る。
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