頂いた素敵小説

□『ハロウィンに愛を込めて』
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ピシっ!!!





手にしていたカップが突然鋭い音を立て小さくヒビが走った。


手にした一枚の写真を凝視する。
その写真に映るのは・・・素晴らしく愛らしい笑みを浮かべた幼児。

「どうだ?義弟。愛らしかろ?」

その写真を見せた男は得意げにメガネのブリッジを指で押し上げる。
その得意げな顔が憎い・・・

できることなら速攻でこの世から抹殺したいほど。


この男は自分がどれほど求めても叶わないものをいとも容易く手に入れているのだ。
その関係性だけを武器にして・・・・。




自分から冷静さが既に蒸発していることすら気づかないほど激昂していた。
辛うじて、今その理性を留まらせているのは、目の前のこの男が自分の最愛のものにとって(一応)大掛け替えのない存在だということ。
ただその一点のみ。



でなければ即効で愛剣の錆にしてる!!
(・・・とはいっても今その愛剣は手元にはないが、代わりの刃物などどうにでも調達できる!!などと危険な思考まで迸ってる)




「いいだろう?このころのゆーちゃんは本当に愛らしくて可愛らしくて・・・・
いつも俺の上着の裾を握って『しょーちゃん♪』っていいながらくっついてきてなぁ・・・
そのかわいらしさと言ったらもぉ〜〜〜〜♪言葉で表せないほどでな?

そうそう・・・このハロウィンのときもなぁ・・・あんまり愛らしいものだから近所の連中がこぞってゆーちゃんにお菓子を持ってきてな?
そのたびに可愛らしく『さんきゅぅ〜』って舌足らずな口調でにっこり微笑むもんだから誰も彼もメロメロになっちまって・・・・
気づいたら家の中が菓子まみれになっていてなぁ」

お前はあの愛らしいゆーちゃんの艶姿を目にしたことないんだもんなぁ〜♪
この写真の数倍は愛らしくて可愛らしかったぞぉ〜
気の毒になぁ〜


ちょっと待て?
普通子供が『Trick or treat(お菓子をくれなきゃいたずらするぞ)』と各家を回るもんじゃないのか?
という突っ込みは無視で・・・・。






手元の写真を蕩けそうな笑みを浮かべながら眺める義兄を憎憎しげに睨み付けるのだった。
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