†鬼世を照らす月†

□プロローグ
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鬼世を照らす月 プロローグ


時は幕末、場は異界
一千年前からこの地を治める神永幕府は衰退の一途をたどっている
そんな治安の悪いこの国では、あちらこちらで流血が絶えないのである

「うわあああ!!」
ここ都、神永には昔からある噂がある
「し、白鬼だ! 白鬼が出たぞぉおぉ!!」
そう、美しい月夜の中その月の如く美しい鬼が人の魂を食らいに奈落ノ国より舞い降りるのだ

「白鬼! 御用だ、神妙にしろ!!」
幕府の役人が駆けつけ目の前にいる白鬼に言うと、鬼の面の中から夜に響く女んの声がする
「フフッ幕府の犬ごときがこの白鬼を捕らえられと言うのならやってごらんなさい」
「っだと貴様!!」
鬼の言葉に怒りを覚えた役人たちは刀の柄を握っていた手の力を強めた
敵は五人…鬼は抜刀することもなく戦闘態勢に入る
その態度が役人達の怒りを更に高め五人は鬼目がけて駆け出した
一人目の役人が鬼の前に立ち刀を振り下げる 鬼はそれよりも早く刀を頭上に蹴り飛ばした
「ぜあ゛あ゛!」
二人目の役人が鬼の右側に立ち刀を左から右に振る
鬼はクルリと体の向きを180度回転させ一人目の役人を前に突き出す
「ぐあ゛あ゛あ゛あ゛!」
必然的に二人目の役人が一人目の役人を斬ってしまう訳で、月夜に叫び声が響いた
それに怯んだ二人目の役人を先程蹴り飛ばした刀で斬る
「ぐあ゛!」
あと三人
「ピチチチチッ」
鬼が残った三人に狙いを定めた時だ、全身を真っ白の和毛(にこげ)で覆った一羽の鳥がやって来て鬼の頭上で翼の
音を目立たせた
鬼はその鳥の存在に気づくと殺気を抑え、持っていた刀を地に捨てた
「……マシロ…か、あとは頼んだぞ…」
鬼は静かに言い月明かりの射す夜に消えていく、鳥は御意とでも言うようにその背中を見送った

今宵もいと美しき月の恩寵のもと鬼は舞い降りた

と鬼は言い残し、完全に姿を消した……



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