幼稚園

□ケンカするほどなんとやら
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ここは風林火山幼稚園。
今は皆それぞれに遊ぶ時間である。

そんな中、2人の男の子がいた。
毛利元就と長曾我部元親だ。

「それをよこせ」

そう言って元就は元親に向かって手を差し出した。
それとは元親が遊んでいたつみきのことだ。

「なんでだよ?おれが遊んでんだぜ??」

「きさまのものはわれのもの、われのものはわれのものぞ」

どこかで聞いたことのあるような台詞である。
やはり子供にとってテレビの影響は大きいようだ。

「そんなことねぇ!!」

「いいからよこすがいい」

元就は元親が持っていたつみきを奪った。

「あっ、かえせよ!!」

つみきを無理やり取られた元親は奪い返そうとつみきを掴んだが元就も離さなかった。

「はなせ…!!」

「もとなりがはなせばいいだろうが!!」

「ふん…バカが作るものなどたかがしれてるわ!!」

「バカって言ったほうがバカなんだぜ!!バカなり!!!」

「ほぅ…それならきさまの方が2回おおく言ったことになるが…」

「あっ…」

「やはりきさまはどこまでいってもおろかものよ」

そんなやりとりを物陰から見ている者が1人。

「クックックッ、楽しいですね。子供の喧嘩を見るのは…」

このクラスの担任…明智光秀先生である。
とても担任とは思えない発言だ。
しかし、これでも担任なのでこの喧嘩(元就の一方的なもの)を止めなければいけない。

「元就くん、何をしているのですか?楽しそうですね。私も混ぜて…おっといけない。それを元親くんに返して差し上げなさい」

光秀は元就に近づくと元就の首根っこを掴んで高く上げた。

「何をするおろせ…!!」

元就はバタバタと暴れたが光秀は降ろす気もなく元就の耳元に口を寄せた。

「元就くん、あんまり暴れると落ちますよ。それとも…私にその歪んだ顔を見せてくれるのですか?」

元就はさぁっと血の気が引くのを感じ、暴れるのを止めた。

「いい子ですね」

(チッ、わたしとしては歪んだ顔を見たかったんですがね)

光秀は元就を降ろすと、残念そうに心の中でつぶやいた。

「さぁ、元親くんに返しなさい」

「……」

一瞬ためらった元就だったが、これ以上光秀のお咎めを受けたくはないようで、素直に元親につみきを渡した。

「一緒にやればいいじゃないですか。つみきなら、2人でできますよ」

光秀はにやけた顔で、渋い顔のままの元就と困り顔の元親に言った。
元就は元親と遊びたかっただけで、元親も元就に言い過ぎてしぼんでいるのだと判断したからだ。

「ほら、」

光秀は元就の背中を押した。

「いっしょにやるか?」

「…ここは、さんかくのほうがよい」

元就は元親の誘いに答える代わりに、てっぺんにあった四角いつみきをどかして、三角のつみきを乗せた。

「じゃあこっちはコレ」

「ちがう、それではバランスがわるい」

「こっちのほうがカッコイイだろ!!」

せっかく仲直りをして仲良く遊び始めたかと思えば、今度はつみきの位置と形のことで揉め始めた。

「きさまにはこのよさがわかるまい…!!」

「もっと高くしたほうがいいんだよ!!」

「…やれやれ、喧嘩するほど仲がいいとはこういうのを言うのでしょうね」

光秀は愉しそうに小さい2人を見つめるのであった。

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