瀬戸内

□特別な日隣にいる人
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誕生日なんて祝ったこともなければ祝われたこともない。
だからだろう。
己にとって誕生日に意味は無く、また無いに等しかった。

それが今年はどうだろう。
人の家にずかずかと入り込んできた男が一人。


「元就、誕生日おめでとう!一緒にケーキ食べようぜ!!」


誕生日など気にも留めていなかった故、今日が己の誕生日だということをすっかり忘れていたというのに。
目の前にはケーキの箱を差し出し、満面の笑みで誕生日を祝う長曽我部の顔があるではないか。


「…貴様何のつもりだ」

「何のつもりって…今日誕生日だろ?」


あっけらかんとそう言った長曽我部に溜め息が漏れた。
誕生日に祝うのは当たり前といったところだろう。
文句の一つでも言ってやろうと口を開きかけたが、馬鹿には何を言っても無駄だと思い止めた。
箱からケーキを取り出しながら「やっぱロウソクは歳の数だよな」なんて呑気に言っている長曽我部を見ていたらどうでもよくなってきたのだ。

自然と口元が緩むのを感じる。
それを隠す為、また憎まれ口をたたいた。









特別な日隣にいる人

(こんな誕生日も悪くない)



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