瀬戸内

□祝いの言葉を
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時計の針は12時を回り、寝る支度も整った。
後は布団に入るだけというところで部屋にインターホンの音が鳴り響いた。
無視しようかと思ったが一向に鳴り止む気配がない。
こんな夜遅くに一体何の用だ。
文句の一つでも言ってやろうと思い、渋々ながらドアを開いた。


「元就!誕生日おめでとう!!」


ドアを開けるなり元親が満面の笑みで待ち構えていた。
一瞬なんのことだろうと思ったが、
そういえば今日は自身の誕生日だったことを思い出す。
誕生日のことなどそれ程興味もないのですっかり忘れていた。


「…あぁ」

「プレゼントは俺なんて…ぶっ」


元親が変なことを口走ったので一発殴ってやった。
偶にはまともな事が言えないのだろうか。
痛がっている元親を呆れた表情で見やった。
期待するだけ無駄か。


「冗談は顔だけにしろ」

「酷ぇ…俺だって色々考えたんだぜ!?」

「で、考えた結果がそれか…」

「おぅ!」


悪びれもなく即答するので、
何だかこっちが間違っているみたいではないか。


「…貴様なぞ要らぬわ」


第一元親なんて貰っても困る。
使い道もない。
パシリになるというなら話しは別だが。


「そう言うなって。後で後悔するぜ?」

「後悔なぞするか。というより今何時だと思っておる。それだけなら明日学校で言えばよかろう」


そうだ。
何もこんな夜に来なくてもいいではないか。
どうせまた明日会うのだ。
我だってもう眠い。
安眠妨害もいいとこだ。
そんなことを考えていると元親が気まずそうに目をそらした。


「ぁー、元就の誕生日は一番に祝いたかったからよ」


元親がそんなことを言うものだから、
不覚にも誕生日も悪くないなんて思ってしまったことは言わないでおこう。












おめでとうは一番に

(俺の誕生日は元就で!)
(…絶対やらん)


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