瀬戸内

□恋しい
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朝起きると異様に体が怠いことに気づいた。
起き上がるのも辛く頭がぼーっとする。
それでもなんとか起き上がり、学校へ行くための支度をしてみる。
少ししてやはり無理だと悟った我は学校に休みの電話を一本入れると布団に倒れ込んだ。

熱がありそうだと思うものの計る体力も冷やすものを持ってくることもできない。
一人暮らしをしているためこういう時は誰が面倒を見てくれるわけでもなかった。

我はそのまま布団に潜ると直ぐに意識を手放した。











どのくらい経っただろう…。

ふっと目が覚めると頭の下には氷枕が置いてあった。
台所からはなにやら音が聞こえる。
確実に誰かいるだろう。

そんなことを思いながらゆっくりと体を起こした。
先ほどよりも楽にはなったが、まだ体が辛い。

「ぁ、まだ起きたら駄目だろ!」

そう言いながら元親が台所から駆け寄ってきた。
布団にやんわりと押し戻され、掛け布団を掛けられる。

「元親…何故貴様が此処におる」

「元就が風邪だって聞いてな。いてもたってもいられなくてよぉ…早退して来ちまった」

「………」

嬉しい反面驚きが隠せない。
こんな時、元親が居てくれたらと心のどこかで思っていたから。

「熱はどうだ?」

元親はそう言って、我のおでこに自分のおでこをくっつけた。
垂れ下がっている元親の髪が頬に当たってくすぐったい。

「…っ」

思いの外元親の顔が近くにあった。
あと数センチで唇が触れそうな距離だ。
「んー、まだちょっとありそうだなぁ」なんてお気楽に言っている元親が少し憎らしい。

「あ、そういやぁお粥作ってみたんだけどよ。ちょっと待ってろ」

元親は台所に行こうとしたが我がそれを止めた。
奴の服の裾を掴んだのだ。
掴もうと思っていたわけではない。
それは一瞬の無意識的行為だったと思う。

「…よいっ、それは後で食す。それより我はもう一度眠る故…貴様はここから動くでない」

それだけ言ってから我は掛け布団を頭の上まで被った。
今の我の顔は見せたくない。
どうやら風邪を引くと人が恋しくなるとは本当のことらしい。

「あぁ、何処にも行かねぇよ」

そんな言葉が聞こえれば安心感と共に睡魔が襲ってきた。




今度目が覚めた時は隣に元親がいることを願って。












ずっと隣で

(たまには風邪も悪くない)

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