瀬戸内

□少しだけ
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元就と一緒に寝るようになって早数ヶ月。
今となってはそれが当たり前となっていた。




「…ん、寒ィ…」

寝相の悪さからか気づけば蒲団から落ちていた。
ぼーっとした頭で元就の方を見れば有り得ないくらい綺麗に寝ている。
ふっと元就の顔に目がいった。
月明かりに照らされて元就の顔がはっきり見える。
整った顔。流れ落ちる髪。長い睫毛。ぷっくりした唇。








…ぷっくりした唇…。








唇…








口付けてぇ…!!








俺の頭は一気に覚醒した。
「少しならいいだろ」という思いと、「寝込みを襲うのはまずいだろ」という思いが対立する。
そんなことを考えている内も元就から目が離せないでいた。
寧ろ引き寄せられる感じだ。

「…元就」

俺は蒲団に入り込むと体重をかけないように元就の両脇に手をついた。
周りからは何の音もせず、元就の小さい寝息が俺を誘う。
もう少しで鼻先がぶつかり合いそうだ。


俺はゆっくりと元就の唇に自分のそれを押し付けた。


「…ん…」

元就からはくぐもった声が聞こえる。
苦しいのか眉間にはしわが寄っていた。




ほんの短い時間だったかもしれない。
でも、俺にとっては長い長い口付けだった。




名残惜しかったがこれ以上やると元就が起きそうだったので止めておく。
俺は元就から離れると元居た場所に戻った。
横からぎゅっと抱きしめる。

「おやすみ…元就」

そう声を掛け、もう一度元就の寝顔を見てから静かに目を閉じた。












起きるに起きれない

(くっ…寝込みを襲うとはいい度胸よ…!)

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