瀬戸内

□謝るのは
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元就と喧嘩をした。
原因は覚えていない。
多分ほんの些細なことだったと思う。

俺と元就が喧嘩なんて結構日常茶飯事だったりする。
仲直りする時は…
絶対に元就から折れることはない。
だからいつもはいつの間にか仲直りしているか、耐えられなくなり俺の方から謝るか、だ。
よって喧嘩をしても3日と続いたことがない。

だが、今回は何故か謝る気にはなれなかった。
そう、強いて言うなら元就からの詫びが聞きたい。











喧嘩をして早一週間。

未だに一言も会話をしていない状態が続いている。
こんなに長く続いたのは初めてで。
俺は既に我慢の限界だった。
ここまで耐えたのも拍手もんだ。

そして、今日元就が竹中と話してるのを見て俺の中の何かが切れた。


「ちょっと来い…」


俺は元就の手首を掴むと引っ張って歩き出した。
乱暴に教室のドアを開ける。
クラスの皆は驚いた顔をして見ていたが、今の俺にはどうでもよかった。


「…何をする!?離せ!」


俺は元就の言葉を無視しながら廊下を突き進んでいった。
空いている教室を見つけると直ぐそこに入り込む。
それから元就を壁に強く押し付けた。
叩きつけたと言ってもいいかもしれない。
自分でやったのに痛そうだななんて他人ごとのように思う。


「っ…貴様」


逃げられないように元就の両脇に手をついた。
それに対し、元就が睨んでくる。

俺は無言で元就の目をじっと見つめ返した。


「貴様、何とか言ったら…ん…っ」


喋っている途中だったが、元就の唇を自分のそれで塞いだ。
今は何も聞きたくなかった。

俺は何回も何回も口付けた。
それは噛みつくように。
合間には慈しむように名を呼び続けながら。


「…元就……元就っ…」


「も…ちか……はっ…んん」


元就が俺の服をぎゅっと掴んできた。
こういう時は元就が俺のだなって実感することができる。

俺は元就の肩を抱くと、そのままゆっくりと近くにあった机に押し倒した。
そして、今度は深く深く口付ける。
息をさせる暇だって与えたくない。

俺は元就の服に手をかけようとしたが、そこではたと気づく。
元就が泣きそうな顔をしてる。


「ぁ…悪ぃ」


こんな顔させたいわけじゃなかった。
少し冷静になった頭で元就を見る。
ここに連れてくる時、手首をあまりに強く握っていたので赤く跡が残ってしまったのに気づいた。
傷つけたくなかったのに。


「…悪かった」


俺は元就の上からそっと退いた。
いつもやってしまってから後悔するのだ。
嫌われて当然かもしれない。


「…何故いきなりこのようなことをしたのだ?」


元就は呼吸を整えて起き上がると俺の目を真っ直ぐ見てきた。
俺はその目を見ていられなくてすっと視線を逸らす。


「……元就が…俺と喧嘩してても平気な顔してるから悪ぃんだぜ…」


少し言おうか迷った。
これでは完璧八つ当たりだ。
俺格好悪いな…。


「はぁ…馬鹿か貴様は。我がいつ平気だと申した?」

「そりゃあ言ってねぇけど…」

「我もそなたと同じぞ。よいか…今度そのようなことをぬかしてみろ…ただではおかぬ」


元就はそう言いながらそっぽを向いた。
髪の隙間から覗いて見える頬は少し赤みがさしている。

俺はというと、元就の言葉にも態度にも嬉しくなった。
元就も本当は俺と同じ気持ちだったということも。
もうそんなことは考えるなと言ってくれたことも。

俺は元就に抱きついた。
なんだか一週間ぶりの元就の匂いに安心した。


元就には申し訳なかったけど、最後は二人で笑えたから。



いつものように仲直りできたよな。












溢れる想い

「そういえば俺達何で喧嘩してたんだっけ?」
「原因は貴様が…他の奴等に笑いかけたりしたからであろう」
「元就…!」


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