瀬戸内

□そんな暇さえ
1ページ/1ページ

元就の背中を見ていて思った。
元就は俺のために泣いてくれるのだろうか。



元就の性格上難しいけど。
少しくらい泣いてくれたらいいなぁなんて思ってしまう俺は馬鹿だろうか。



「俺が死んだらあんたは泣くか?」


言うつもりはなかったが、気づけば口から出ていた。
無意識とは実に恐ろしい。

「…なんだ急に」

元就は俺の方を見ると怪訝そうに眉を寄せた。

「いや、別に深い意味は無いんだけどよ。どうなんだろうなぁって思ってな」

「…泣かぬ。貴様のために流す涙なぞ無いわ」

元就は少し考えるときっぱりと言い放った。

「やっぱりな。そう言うと思ったぜ」

俺がそう言って笑うと元就はむっとした。
俺に先を読まれたのが嫌だったのだろう。

「では逆に問う。貴様はどうなのだ?」

これは意外だ。
まさか自分が聞かれるとは思ってもいなかった。
でも、俺の中では既に答えは決まっている。

「…俺は…泣かねぇ」

「ほぅ…これは意外だな。貴様なら泣きわめくと思うたぞ」

元就は嫌味っぽく言った。
それでも俺は構わず続ける。

「死ぬ時は元就と一緒だからな。泣く暇もないってことだ」

「…なるほど。貴様にしては一理あるな」

そう言って、元就はふっと笑った。
元就が同意してくれることこそ珍しいのに、笑ってくれるなんて。
くすぐったくてなんか笑えた。







俺のために泣いてくれたら嬉しいけど…




やっぱり最期は笑顔がいいかも。












君の笑顔が一番

(でも…偶には涙もみたいもんだ)

[戻る]


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ