瀬戸内

□理由なんてない
1ページ/1ページ

「元親君のどこが好きなんだい?」

竹中と話しをしていた時、唐突にそう聞かれた。
そういえば、我は奴のどこが好きなのだ?
というか好きなのか?
数秒考えてもその答えは出なかった。

「………わからぬ」

「元就君らしいね」

そう言って竹中に笑われた。
本当のことなのだから仕方がないではないか。









それからと言うもの竹中の言葉が頭の中を駆け巡った。
気がつけば元親を目で追っていた。

認めたくはない。
ないのだが、仮に我が奴のことを好きであったとしよう。


『どこが好きか?』


そう問われれば、奴には好きになれる理由が全くと言ってない気がする。
そもそも我は奴の性格が嫌いだ。
それなのにどうして好きになれようか。
そんなことを考えていたら元親と目が合った。
それでも我は目を逸らさず、じっと見つめたままでいた。

「元就?どうかしたか??」

パッと見た感じもいい所が一つも無さそうな男ではないか。
我はこれのどこがいいのだ?
やっぱり答えは出なかった。

「……わからぬ」

気づけば口をついて出ていた。
我は元親に背を向けると歩き始めた。

「待てよ、元就!何がわかんねぇんだ?」

元親はそんな我の後に続き、隣を歩きだした。

「…貴様には関係のないことよ」

我は元親をちらりと横目で見やった。
こんな奴のために我が時間を割いているなど考えただけでも腹立たしい。

「んなことねぇよ!元就に関係してることは俺も関係してんだよ」

我ははたと立ち止まった。
元親を見据える。
もし、竹中と同じ質問をしたら元親はなんと答えるだろう。
我と同じように答えられないのだろうか。

「…貴様、いつも我を好いていると申しておるな」

「あぁ」

そうだ…あんなに好意を表しておいてわからないなんてことはないだろう。
絶対に理由があるはずだ。

「ならば、我のどこが好きなのだ?申してみよ」

「どこって…………全部」

元親は考えるような仕草を見せた。
かと思うと、出てきた答えがこれだ。
それは我の予想とは明らかにかけ離れていた。

「なんだその間は?それに、それでは答えになっておらんわ」

呆れた。
全部などと言ってしまえばそれほど簡単なことはないだろう。

「んなこと別にいいじゃねぇかよ。元就のどこが好きとかわかんねぇし。ただ好きだから…それじゃ駄目なのかァ?」

ただ好きだから…か。
確かにそうかもしれない。
理由などないのだ。

「…ふむ…まぁ悪くない答えだ」

心のつっかえが取れたようだった。
すっきりして気分がいい。


不本意ながら…
今回ばかりは我も元親と同じ考えらしい。



今度竹中に聞かれた時はちゃんと答えられそうだ。














というか…





我は奴が好きなのか?












全てが好きだから

(根本的なことからわからない)

[戻る]


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ