瀬戸内

□一人より二人
1ページ/1ページ

冬も本格的になってきた。
陽が落ちるのも早く、吐く息は白い。


今日は生徒会の仕事で少し遅くなってしまった。
辺りは既に暗くなっている。
我は巻いていたマフラーに顔を埋めた。
寒いのは苦手だ。
早く家に帰りたいのも手伝って足は自然と速くなる。

「元就」

聞き慣れた声がした。
眼だけで声のした方を見てみると、元親が門に寄りかかりながら此方を見ていた。
それだけならまだ許せる。

「…っ貴様、何故そのような所におるのだ!?」

我は声を荒げた。
そうしなければいけない理由があったのだ。

「何故って…元就を待ってたに決まってんだろ」

元親はさも当たり前のように言い放った。

「そのようなことを聞いているのではない!!一体いつからいたのだ!?」

元親は寒さのせいで背を丸めながら縮こまっていた。
マフラーや手袋などはしていない。
それでいて外で待っているなど本当に馬鹿だと思う。
鼻は赤くなっていて、随分待っていたことが伺える。

「ん〜、二時間くらい前?」

「…貴様は馬鹿か…もっと暖かい所にいればいいものを」

余りの馬鹿さに怒る気も失せた。
そこまでして待つこともないだろうに。

「ここなら絶対元就が通るだろ?」

「ハァ…呆れてものも言えぬわ。我に電話なりメールなりで言えばよかろう」

「元就が俺からのをすぐ見るとは思えねぇ」

「………」

そう言われてしまえば返す言葉も見つからない。
図星だったからだ。
思い当たる節はいくらでもあった。

我は元からあまり携帯は開かない方である。
例えディスプレイに長曾我部と表示されたのに気づいたとしても放置しておくことが多い。
これは元親限定だが。
基本気まぐれだ。

「だろ?」

「黙れ……これでも巻いておけ」

我は元親に向かって巻いていたマフラーを投げつけた。
首もとから寒い風が入ってくる。

「こんくらい平気だって!それに元就が寒くなっちまうだろ」

本当に甘い。
少しは自分の心配でもしたらどうだ。

「巻け!見てるこっちまで寒くなるわ」

我を待っていたことで風邪でも引かれたらたまったものではない。
だが、すぐにそれはないかと考えを改める。
馬鹿は風邪引かないと言うしな。

「あっ、じゃあこうしようぜ」

元親は何かを閃いたようで、ニッという効果音がつきそうな顔で笑った。
かと思うと、自分の首にマフラーを巻き、残りを我の首に巻きだした。

「な、何をする!?」

そこまで長くないマフラーのおかげで我と元親の距離はぐんと縮まった。
それこそ肩がぶつかり合うほどに。

「こっちのが温けぇだろ」

元親が笑ってそう言うものだから…。

「…まぁ…悪くない」

そう答えてしまった。




我はマフラーに顔を埋めた。
先ほど一人で埋めていた時よりも温かく感じる。
不思議だ。
我はちらっと元親を見た。

相変わらず馬鹿みたいに笑っている。






今日は寒さに耐えながら帰らなくてもよさそうだ。












一緒に帰ろう

(己奴がおれば防寒対策は完璧よ!!)

[戻る]


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ