学園

□彼に悪気は無いのです。
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※三成の性格捏造。





帰りのHRで担任の長い話を半分以上聞き流したあと、さようならの号令と共に俺は真っ先に教室を飛び出した。
半兵衛と一緒に帰ろうと思って隣のクラスを覗くと、こちらのHRはとっくに終わっていたらしく、教室には数人しか残っていなかった。
その中に見知らぬ誰かと話している半兵衛の背中を見つけて、俺はゆっくり近づいて声を掛けた。


「半兵衛、帰ろう」

「ちょっと待っててくれ。すぐ終わるから」


半兵衛はちらっと振り返って言うと、再び見知らぬ彼の方を向いてしまった。

することもなく暇な俺は近くの椅子に勝手に腰掛けて、半兵衛と談笑する彼の観察を始めた。

彼は上履きの色からして1年生だ。
髪は灰色がかった銀色で、前髪が長く、そこから覗く双眸は鋭い。いかにも冷徹そうだ。
しかし秀吉という名前が出てくると顔を緩ませるあたりから、可愛い面もあるようだ。(半兵衛も秀吉の名前が出ると同じように微笑を浮かべていた)

2人の会話をなんとなく聞いていると、今後の方針がどうだとか予算がどうだとか聞こえた。
どうやら生徒会のことを話しているらしい。
時折秀吉(生徒会長)の名前が出るのもそのせいみたいだ。

(それにしても…)


「秀吉は元親君の服装の件は元就君に任せておけばいいと言っていたけど、君はどう思う?」

「秀吉様が言うならそれでいいと思います」

「そうだね。じゃあ元親君のことは元就君に任せよう」


(何だかなぁ…)


どの話題も秀吉の考えが最優先されていて、2人が意見を交換する必要は皆無だ。


「なぁ、まだ?」

「あと少しだよ」


半兵衛に待っていろと言われてから、もう30分も経っていた。


「…どうせ全部秀吉の考えに賛成なんだろ?話す必要あるのかよ」


つい口から出た本音に半兵衛は眉間に皺を寄せたが、それもそうだねと言って頷いた。


「じゃあ三成君、他の案件も秀吉の言っていた通りに進めよう」

「そうですね」

「あんた三成っていうんだ」


帰ろうと背を向けた三成に声を掛けると、彼はこちらへ向き直った。


「はい。石田三成です」


見た目とは裏腹に礼儀正しいようで、三成はぺこっと頭を下げて名乗った。


「俺は前田慶次」


俺も彼に笑顔を向けて名乗った。
すると三成は一瞬驚いたように目を見開いた。


「貴方が慶次さんですか。先輩からよく伺ってます」

「えっ、マジ?」


半兵衛が俺のことを他人に話していたなんて意外だったので、どんな風に話しているのか気になって、少しわくわくした。
しかし俺の期待したような言葉は一切返ってこなかった。


「はい。風のように気まぐれで恋に恋しててKYで存在が空気なんですよね」

「………ぇ、あぁ、まぁ…」


三成があまりにも堂々と言ってのけたので返す言葉に困ってなんとも間抜けな返事をしてしまった。
確かに自分で考えてみても三成の言うことに間違いはないのだが、初対面の彼に面と向かって言われて少々傷ついた。

半兵衛は笑いをこらえているらしく三成の横で肩を震わせていたが、三成はそれに気付いていないのか、はたまた気にしていないのか、一度お会いしたいと思っていました。と言って話を続けた。


「想像通りでした」

「そうかい?」


想像通りということは、風のように気まぐれで恋に恋しててKYで存在が空気だということだ。
俺はさらにへこんだ。

そんな俺の様子に気づかないまま三成は時計を見ると、そろそろ失礼しますと言って足早に去っていった。
あれだけの会話でこんなに気落ちするなんて。
三成という人物、恐ろしい。


「…ふふっ」

「笑うなよ!」


三成が教室から出た途端、半兵衛が声に出して笑った。
ああもう、俺はこれでも傷ついたのに!


「…彼、素直だろう?」

「あぁ、びっくりした」

「……ぷっ」

「また!」

「だって慶次君の顔、」


鳩が豆鉄砲を食らったようだったから。
そう言って彼はまた笑った。










彼に悪気は無いのです。










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書き方模索中。

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