学園

□冷たい王様
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「元親、アイス買ってこい」

「は?」

暑さに負けて家でのびていると、元就が突然口を開いた。
それまで、暑さのせいでお互いに黙りこくっていた。

元就が扇風機の前に陣取っているおかげでこっちに風が来ない。
真夏に無風はキツい。


「アイスを買ってこいというのだ」

「外に出たら干からびちまうぜ?」

「そうか。そのまま焼け焦げて死んでしまえばよい」

「…大体、何で俺ん家に居るんだよ。自分の家に帰れ」


元就の酷い言葉は無視した。

元就は何故かこの暑い中俺の家へやって来て、扇風機を占領している。
彼は俺の部屋のクーラーを勝手に付けるつもりだったのだろうが、あいにくクーラーは壊れていた。


「このままでは共倒れぞ」


現在、部屋の気温は30度を越えた。
この部屋を冷ます唯一のアイテムである扇風機は、先程言ったように元就が独占している。
アイスで体を冷やすのは得策だ。

でも外には出たくない。
というか、元就が買ってくればいいと思う。


「食いたきゃ自分で…」

「ほう…前田に貴様の過去を暴露してよいのか」

「…!!そ、それだけはやめろ!!」


顔色一つ変えない元就に対し、俺は慌てて声を張り上げた。

慶次に話せば噂などすぐに広まってしまう。
俺が昔姫若子と呼ばれていて、女装が似合うからという理由で頻繁に女装させられていたなどという過去は隠し通したかった。(しかも当時の俺は、女装が割と好きだった)

それがクラス中、いや、学校中に広まってしまうなど耐えられない!


「なら、行くがよい」

「はいはい。…金はまさか払うんだろうな」

「何を言っておる。貴様の奢りに決まっておろう」


元就はさらりとそんな事を言う。


「はぁ…」


俺はため息をつくと、ゆっくりと立ち上がって、灼熱の太陽が待つ地獄へと足を踏み出した。









アイスより冷たいその瞳
(それは愛情の表れ?)




「買ってきてやったぜ、ほら」
「……溶けているではないか!」
「しょうがねぇだろ!暑い中行って来たんだから」


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