学園

□日輪よ、出て来てはくれまいか
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同じ教室の廊下側の席に、窓際の2人より深刻な問題を抱えている者がいた。

元就である。

彼はムスッとした表情で外を見つめていた。


「…元就くん、元気がないようだけど、どうしたんだい?」

「竹中、」

そんな元就の元へやってきたのは、湿気のせいでいつもより髪が膨らみ気味の半兵衛だった。

「日輪が拝めぬのだ」

「それは、君にとって大問題だね」

「雲など海に沈んでしまえばよい」

元就が真顔で言うものだから、半兵衛は少し可笑しかった。
半兵衛は笑いが込み上げてくるのを我慢した。

「……君も、たまにすごいことを言うね。水蒸気を水に沈めるなんて」

「それほど雲が憎いということぞ!」

雲を憎む気持ちはわかったが、元就は雲に限らず、気に入らないものは何かと海に沈めたがる。(特に元親)

「…仕方ないよ。僕らには、どうすることもできないからね」

「…わかっておる」

元就は、視線を机へ落とした。
半兵衛は元就に声をかけたことを後悔した。
元気づけることもできなければ、今すぐ雲をどかすこともできない。

「そういえば、今朝の天気予報では、明日は晴れると言っていたよ」

「…!!それはまことか!?」

「うん」

「おぉ…やっと日輪が拝めるのだな」

元就が微かに笑ったので、半兵衛も微笑んだ。

「半兵衛、いつもよりふわふわ」

いつのまにか半兵衛の後ろには慶次が立っていて、半兵衛の髪を触っていた。

「触るな」

「痛っ」

半兵衛は慶次の手を振り払うと、振り返って冷たい目で睨んだ。
そしてすぐ、元就の方へ向き直ってしまった。

「何しに来たんだ、君は」

半兵衛は慶次に背を向けたまま話した。

「半兵衛の髪の毛触りに来「今すぐ立ち去りたまえ」

二人が話している間、元就は雨上がりの日輪の姿を思い浮かべていた。
もしかしたら虹も出るのではないかと、期待をしてみたり、久しぶりに見る日輪はきっと美しいだろう、とか。

「せっかく来たのに」

「…来てほしくないし、今は元就くんと話していたんだ」

「何を話してたんだい?」

「君に教える必要はない。…触るなと言っているだろう!」

懲りもせず、慶次は半兵衛の髪に手を伸ばした。
しかし、すぐに振り払われた。

「ひっどいなぁ」

「君が悪い」

「で、何の話?」

「雨の話。これで満足かい?早く立ち去りたまえ」

半兵衛は呆れ気味だ。
しかし慶次に立ち去る気はないらしい。

「梅雨って、嫌だよな」

「うん。でも明日は晴れるらしいじゃないか」

半兵衛が「ね、」と言うと元就は小さく頷いた。
本当に嬉しそうだ。


「え?さっき携帯で見たら明日も降るってあったけど、予報変わったのかなぁ…」


慶次が言い終わると同時に、教室に鋭い音が響いた。

元就が勢いよく立ち上がったせいで椅子が倒れたのだ。
元就は放心状態で、仏像のように立ち尽くしていた。


「慶次くん…全く君は、」

半兵衛は慶次に軽蔑の眼差しを向けた。

一方慶次はキョトンとしている。





「どうしていつも空気が読めないんだ!!」






「……俺、何か悪いこと言ったっけ!?」

「自分で考えるんだね」

「え、何が悪かったんだい?」

「さぁ」

「なぁ、俺、何したんだよ」

「うるさい。ホントにバカだね」



「悪かったって!!」
(何が悪かったのか、わかんないけど)
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