小説
□出来心
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−長曾我部元親の部屋−
「も・と・ち・か」
元親はオウムに言葉を教えていた。
オウムに名前を呼ばせることは元親の密かな夢でもあったのだ。
『アニキ!!アニキ!!』
子分達がアニキと呼んでいるせいかオウムもアニキと覚えてしまったらしい。
「ちげぇ…も・と・ち・かだ」
『もとちか!!もとちか!!』
「よし、偉いぞ!!」
元親は嬉しそうに笑うとオウムにクラッカーを差し出した。
「じゃあ次だ!!も・と・な・り・の・バ・カ」
元親は日頃の仕返しだと言わんばかりにオウムに言葉を教えた。
『もとらりのば…が!!もとらりのばが』
「おしいな。も・と・な・り・の・バ・カ」
『もとなりのバカ!!もとなりの−ガラッ
突然襖が開いた。
「何をしておる?」
「…べべべつに…ななにもしてねぇよ!?も、元就こそこっちに来るなんて珍しいじゃねぇか」
いきなりの元就の登場で元親は内心焦ったがどうやらさっきのは聞かれてないらしく、元親は落ち着きを取り戻した。
それも束の間…
『もとなりのバカ!!もとなりのバカ!!』
オウムがさっきの言葉を繰り返したのだ。
「………」
「………」
静寂が部屋を覆った。
元親の背中からは嫌な汗が流れ出ている。
「貴様、我を愚弄するか…!!日輪の威光を持って焼き鳥にしてくれるわ!!」
元就はオウムに向かって輪刀を構えた。
「待て待て待て!!やっと言葉覚えたんだぜ!?」
元親はオウムを庇うように前へ出た。
「知るか」
「わ、悪かった…つい出来心で…」
「死ね」
元親は恐る恐る誤ったが、元就の一言はそれを一蹴りした。
「ギャアァァァ!!!」
『ギャアァァァ!!!』
部屋からは元親の悲鳴とオウムの悲鳴が絶えなかったとか…
(もとなりのバカ!!もとなりのバカ!!)
(貴様…己奴を黙らせろ!!)
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