小説

□野菜は世界を制す
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「政宗様ァァお待ち下されェェェ!!!」

「はっ…待てと言われて待つ奴はいねぇぜ、小十朗!!」


二人は城内を全力疾走していた。


「政宗様ァァァ!!!」



こんな追いかけっこが始まった原因は数分前にさかのぼる。

それは政宗が朝食を食べていた時のことだった。


「政宗様、小十朗に御座います」


政宗がいる部屋の襖の向こうには小十朗が膝をついて政宗の返事を待っている。


「入れ」

「はっ」


小十朗は政宗の了解を聞くと襖をすっと開けて部屋に入った。

が…

小十朗の目がある一点で止まった。


「What?」


政宗がどうしたのだろうと不思議に思った直後…


「政宗様、また人参を残していらっしゃるな!?」


小十朗の一言に政宗はしまったと思った。


「Aaー、後で食べる」

「この小十朗の目の前で今食べていただきたく存じます」

「………勘弁してくれ」


政宗にとって小十朗が作った野菜は絶品だが、どうしても人参だけは好けなかった。


「いいえ、それはできませぬ!!その人参はこの小十朗が手塩にかけて育てた人参ですぞ!!残すなどもってのほか!!大体政宗様は…」


小十朗が目を瞑り小言モードに突入した。


(今のうちに…)







と言うわけである。

思い返しても嫌気がさすぜと政宗が油断をしていたその時…


「政宗様を確保!!」


「「「うぉぉぉぉ!!!」」」


小十朗の掛け声とともにどこからともなく兵士たちが現れたのだ。


「げっ!?」


兵士たちは政宗の上に飛び乗り政宗を押さえつけた。

流石の政宗もこれはよけられない。


「どきやがれお前ェら!!」

「政宗様観念しなされ。これも政宗様が逃げるからで御座います故。されど政宗様、兵士たちに取り押さえられるなどあってはならんことですぞ。人参を食べていればこのようなことはないはずです」


いや、人参食べても関係ないだろ!?と心の中でツッコンだことは内緒だ。


「政宗様、立場をよくお考え下され。政宗様は一国を背負っているのですぞ。人参くらい食べれないと国もまとまりませぬ」

「人参食えりゃ国まとまるってか?」


政宗は有り得ねぇと言うように言った。


「勿論に御座います!!人参で天下統一も夢では御座いませぬ」


小十朗は真面目に言い放ったのだ。










(人参で天下統一できたら苦労しねぇよ…!!)
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