ヤンデルーム←
□闇(病み)小説
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「なんかここ、秘密基地って感じだよな。食料とか家具とか持ち込んでみようか?」
「旅しながら通う気があるのならお好きにどうぞ。入り口の大きさは配慮に入れときなよ。
……で、いつまでここで雨宿りしなきゃいけないんだろう。遅くなったら、みんな心配しちゃうよね」
言いながらジーニアスは、何気なく自分たちが来た道を振り返った。
先ほどまで楽しそうに笑っていたロイドの表情から、ふっと笑顔が消えた。
僅かに目を細めて、ジーニアスの後ろ姿を見つめる。
「――帰りたいか?」
「は?」
「そんなに、帰りたいのか?」
「いや……、そりゃずっとここにいるわけにはいかないでしょ。まァ、まだ雨降ってる気配あるから帰れないけど。
――何、帰りたくないの? またなんかやらかした? 姉さんからの宿題、やってないとか?」
少し呆れたようにジーニアスは言って、ロイドの方を向いた。
暗いため、ジーニアスからはロイドの表情がはっきりとは見えていない。
ロイドは無表情から、うっすらと笑みを浮かべて、
「ああ」
そんな、肯定的な意味を持つ短い返答。
やれやれ、とジーニアスは肩をすくめた。
「なんでそんなに宿題忘れるかな、もう。姉さんがかわいそ」
姉さんが可哀相だよ。そう続けようとしたジーニアスだが、その発言は途中で強制的に止められた。
「がっ……!?」
ジーニアスのその腹に、剣が突き刺さっていた。
それはジーニアスの身体を貫通し、剣先が背中から突き出ている。
「――ごめんな」
そう呟いて、ロイドはジーニアスの身体から刺した剣を引き抜いた。
同時に噴き出した返り血を浴びながら、倒れるジーニアスを優しく抱きとめる。
「なっ……、ん、で……?」
「おまえが、みんなに好かれてるからだよ」
途切れ途切れに、掠れる声でやっと言葉を続けたジーニアスの問いかけに、ロイドは冷静な声で答える。
力尽きたようにジーニアスは崩れ、それに合わせるようにロイドも屈み、座った。
自分の膝にジーニアスの頭を乗せ、右腕をその首の下に入れ固定し、姿勢だけは楽な体勢にさせる。
「最近、俺ら2人で遊ぶ機会も減ったよな。気づいたらおまえ、コレットやエミルと一緒にいることが多いし」
「そ、れ……、は……」
「あの2人もおまえのこと、大好きだもんな、仕方ないよな。でもな、」
ロイドは1度抱擁を解いて、左手でジーニアスの前髪を払い除け、そのまま撫でるように顎まで手を滑らせた。
ロイドの左手についていた血が、ジーニアスの前髪を赤く染めた。
「おまえには、俺だけの親友でいてほしいんだよ、ジーニアス」
「ロ……、イ、ド……っ」
「誰にも渡さない。これで、おまえは俺のモノだもんな」
今にも消えそうな、か細い声で名前を呼ばれ、ロイドは満足そうに微笑んだ。
それから左手をジーニアスの腰に回して、再び抱きしめる。
その際貫通した背中の傷に触れて、ジーニアスは苦しそうに呻き声を洩らした。
![](http://id43.fm-p.jp/data/134/Minor/pri/378.jpg)
「ごめん、痛かったよな? でも大丈夫、そのうち楽になるから――」
「……っ」
ジーニアスの意識が朦朧として、やがてずっしりと身体が重く感じるようになった。
ロイドが声をかけても、もう何の反応も示さない。
「おまえの心臓の音、心地良い響きだな」
「………」
「身体、まだ温かいな」
「―――」
「俺はずっと一緒にいるから。心配するな、ジーニアス――」
ロイドの呟きは、しばらく洞窟中に響き続けた。
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あとがき(という名の反省文)+おまけ(挿絵のアップ)