匂紫羅欄花

□第3話 近
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***
 
 

「……陛下、ご気分はいかがですか?」


「………して…」

 
「……はい…?」

 
「……どうして、貴様がここにいる…?」




***



広い部屋の中には、夜風が窓硝子を揺らす音だけが、カタカタと響いている。
 
 
 
 
 

「……陛下がご病気とうかがったもので……ご迷惑でしたか…?」

 
「……はっ……見舞いに、来たと申すか…?」

そう言って、嘲笑する顔が室内の蝋燭の火に照らされて、ぼんやりと浮かぶ。


「………陛下?」

 
「――何が、望みだ?」

 
「え?――」

 
「……私の機嫌でもとって、権力が欲しいか…?」

 
「っ!――なっ」

 
「……それとも、富を望むか?」

 
「陛下っ!私は、そんな………」

 
「――本当に、見舞いに来たとでも、言うつもりか…?
……はっ…馬鹿馬鹿しい…………何の利益も、ないのに、誰が来ると、言うのだ……っ!」
 
興奮のためか、だんだんと息が苦しげなものに変わっていく。


「陛下っ…」


「……それに、この病はまだ治療法が見つかっていないっ…、いずれは、死に、至る………これは移る病……それがわかっていて来たのか…?
……それとも…知らなかったか…?……いずれにしても、愚かな、ことにかわりないがなっ…、………」


「―――――」







―――言葉が、出なかった。


あまりに、驚き過ぎてしまって………




何故この方は、ここまで人を拒絶するのだろう……


それは、この方の特異な環境からなのか







こんなふうに言われて、不思議と腹が立たなかったのは



―――人を拒絶する色を浮かべた瞳の中に、一瞬でも、哀しさのようなものを垣間見た気がしたからだろうか………?



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