匂紫羅欄花

□第3話 近
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……窓の外は昼間とは打って変わり、冷たい風が吹き荒れている。
 
 
エルヴィーは窓の外からベットへと視線を戻した。
 
 
その目線の先には彼女の夫である、この国の王が荒い息をしながら眠っている。 
 
 
(……ここまで酷いなんて……もっと早くに来るべきだったわ……)
 
 
 
 
 
***
 
 
 
 
「――流行り病?」
 
「はい。……一週間前くらいになるでしょうか、陛下がお倒れになったのは…。 
二ヶ月ほど前くらいから地方の方で新種の病が流行り出したのですが…それが最近城下にまで広がり、とうとう陛下までもがかかってしまったのです…。」
 
 
「まぁ!!ということは、姫様が嫁ぐ前にはもう流行っていたということではないですかっっ!!
 
そんな危ない時期に嫁がせるなんてどうい「落ち着きなさいアネット。
それで、陛下のご容態は……?」
 
「それが……詳しいことはよく……」
 
「仮にも陛下のことよ?
城内で噂話くらいは流れていてるんじゃない…?」
  
「それは………」
 
「イバァン殿!はっきりして下さいませっ!!
 
…陛下が流行り病にかかっているのは知っていて、どうしてご容態は知らないんですのっ?!」
 
「…申し訳ございません。本当に、わからないのです………わしのようなものは陛下の寝所には近づけませんので………それに……」 
「……それに?」
 
「………これから申し上げることは、どうか他言無用でお願い申し上げまする。
…エルヴィーラ様のお人柄を信用してお話し致しますが……
 
 
 
 
 
 
 
この城の中に、陛下のご回復を願っている者は…ほとんどいないのです―――」 
 
 

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