素敵な宝物
□等身大の恋愛事情
1ページ/1ページ
「おチビ見てみて、かっわいい〜。」
「…本当だ。」
英二先輩と付き合いはじめて、初めて部活が休みになったから、デートに誘ったんだけど…
「不二ぃ、こっちに居るよ〜」
「ん?」
「……」
そう…もれなくこの人も付いてきた。
「本当だね、可愛い。英二に似てるね。」
「ほぇ、そうかにゃ?」
「うん、この大きな瞳とか柔らかい毛とか。」
「にゃ…///」
「(怒)」
俺の英二先輩に、触るなっ!
そう、俺達が休みって事はこの人も休みなわけで。
『んじゃ、3人で遊ぼっ!』
鶴の一声でこうなってしまった。
「不二先輩、コレ俺のだから、触らないでくれます?」
「クスッ、越前くん居たんだ。小さくて見えなかったよ。」
ったく、いつもいつも、こんな感じで邪魔してくる。
人気者で可愛い恋人を持ってしまった宿命なのかもしれないけど…
「も〜う、仲良く遊ぼっ!」
…誰の所為だっての!
俺は深くため息をついて、他の男の隣で楽しそうに笑う愛しい恋人を見つめた。
「はぁ、楽しかったにゃ。」
「クスッ、英二ってば本当にペットショップ好きだよね。」
「うんっ、だって可愛いじゃん。」
「英二が一番可愛いよ。」
「ふっ、不二ぃ〜///」
いつものパターンだ。
きっとこの2人は、教室でもこんな感じ何だろうな。
「…おチビ、どったの?」
「別に…」
完全に拗ねモードに入った俺は、プイッと外方を向いてしまった。
「クスッ(ガ・キ)」
「!!!」
不二先輩が頬杖つきながら、笑っている。
クソッ、バカにしやがって!
「おチビ〜?」
小首を傾げて顔を覗き込んでくる英二先輩。
近すぎる顔に思わずドキッとする。
それを振り払って、俺の不満をぶつけた。
「英二先輩、そんなに俺と2人が嫌なんだ。」
「ほぇ…そ…そんな…」
一気にシュンとなる英二先輩。
「越前!何て事言うのさっ!」
開眼して睨み付けてくる不二先輩が俺の胸ぐらを掴む。
「何するんだよっ!放せッ!」
「君が英二に謝るまで放さない。」
睨み合いの中、不意に俺の背中にいつもの心地よい温もりを感じる。
「もぅ、良いから。不二。」
「英二…」
「ごめんね、おチビ。俺…おチビと2人きりだと、ドキドキしっぱなしで、心臓壊れそうになっちゃって。何か…上手く話せないし…。」
後ろで消えそうな声で話す英二先輩。
それって…
「英二先輩?」
「うっ…!だって、おチビが明るくて騒がしいくらいの俺が好きって…言ってくれたから…」
つまり、2人きりだと緊張して上手く話せないから、そんな英二先輩は俺の好きな英二先輩じゃないって…思ってるって事か。
ったく、この人は…
「おチビ…怒ったの?」
上目遣いにおどおど俺の様子を伺う英二先輩が、あまりにも可愛くて…愛しくて。
「英二先輩!」
「にゃっ///」
俺は思いっきり強く、目の前の愛しい存在を抱き締めた。
「…まったく、人騒がせなバカップルだよね。」
深い溜め息をついて、薄く笑う不二先輩が目の端に映る。
「すみませんでした。不二先輩。」
「クスッ、素直なキミはちょっと怖いな。…それに」
英二先輩を抱き締めている反対側の耳元でポソリと呟く。
「英二の事、諦めた訳じゃないから。」
「っ!!」
俺の睨みを軽やかにかわして、
「じゃ、英二。僕は行くね。また明日教室で。」
「うん。不二っ、ありがとにゃ。」
英二先輩にニッコリ微笑んで、手を振り去っていく不二先輩。
悔しいけど、スマートで格好良い。
「おチビ…えと///」
未だ俺の腕の中でじっとしている英二先輩を見ると、大きな瞳と視線がぶつかる。
「…こんな俺でも、良い?」
なんて、言ってくるから、思いっきり耳元で囁いてやった。
「どんな英二も愛してるよ。」
「///」
これから、いろいろ2人だけの会話をしていけば良い。
だって、俺達の恋は、まだ始まったばかり。
無理に背伸びする事は無いんだ。
俺も…英二も…。
「とりあえず、自己紹介でもしてみる?」
「あははっ、うん、そだね。」
等身大の、お互いを…。
知っていくんだ。
END