リボーン2

□世界の色
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目が見えなくても、季節の移り変わりや生命の温かさを感じて欲しいという祖父の願いで、春夏秋冬の年に4回祖父の別荘があるこの地にやってくるのだ。
今回も、少し遅い避暑としてやって来た。


本来なら夏休みが終わり、新学期が始まっているこの時期だが、ツナは中学には行ってない。

学校に通う代わりに家庭教師がずっと側に居るため、ツナにはある程度の知識と教養は身につけていた。

ツナに寄り添うようにして歩いている青年が、家庭教師のリボーンだ。


「セミの声は聞こえないが、鈴虫の音は聞こえるだろ?」


リボーンがそう言うと、ツナは耳を澄ませる。
視覚に頼れない分、ツナの聴力は一般的な人よりも幾分優れていた。


「うん、聞こえる。……鈴虫の声ってキレイ」


楽しそうに虫の音に聞き入るツナから、リボーンは邪魔しないようにそっと距離を取った。



虫の鳴き声。

風の音。

木々のざわめき。



「世界は、たくさんの音が奏でられているね」

「……そうだな」


頷きながらリボーンは。


『目が見えるようになると、もっとたくさん素晴らしいものが見えるようになるんだぞ』


そう言い掛けるが、口を閉ざした。



確かにツナはドナー待ちである状況だが。
ツナの祖父は結構な実力者で。
手を回せば今すぐにでも手術は行えるのだ。

だが、ツナ本人はそのことを断固拒否している。


『他にもたくさんの人たちが、暗い世界でドナーを待って必死に生きているのに、オレだけがズルなんて出来ないよ』


泣きそうになりながらそう言ったツナの顔を。
リボーンをはじめ肉親達は、忘れることなど出来なかった。



誰よりも無垢で。

誰よりも真っ直ぐ。



そんなツナの意思を。
周囲の人たちは尊重することを決めたのだ。



「―――日が落ちると風が冷えてくる。屋敷に戻るぞ」



だが同時に。

ツナの不器用なまでの真っ直ぐさが、時に酷くもどかしく思うこともあるのだが―――。




  
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