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□名探偵シャナン
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夕食を済ませたオイフェはいつものように食後の紅茶を楽しんでいた。
軍略家であり発明家でもある彼にとって食後のティータイムはその明晰な頭脳を活性化させるために必要な、いわば儀式のようなものだ。
そんな彼の至福の時間に水を差す大声がここ「オイフェ研究所」に響いたのはすでに日の暮れた夜8時過ぎだった。
『オイフェ!オイフェ〜〜ッ!!』
ドンドンと研究所のドアを叩きながら自分を呼ぶ声にオイフェは顔をしかめる。
(まったく…こんな時間に、無粋な!)
心の中で悪態をつきながらもドアを開けてしまうのは彼の生来の人の良さなのだろう。
「なんですかな?こんな時間に…」
オイフェがドアを開けると同時に声の主は研究所の中に転がり込んできた。
「こ、これ!勝手に入ってはいかん!」
とっさに叱ったオイフェだが、肩で息をしているこの「侵入者」を見た瞬間彼は固まってしまった。
(子供?いったい何故私の所に…い、いやそれよりこの子供…どこかで……)
「オイフェ…助かったよ。アンタの所しか頼れる所がなかったんだ」
少年はそう言ったがオイフェにはさっぱり意味が解らない。
「坊や、キミは私のコトを知っているみたいだが、あいにく私はキミのコトを知らない。説明してくれるかね?」
「知らないワケないだろう!オレだよ!シャナンだよ!!」
「シャナン?なにを言っとるんだねキミは…確かに私の知り合いにシャナンという男はいるが、彼は子供ではないよ」
「だーかーらーっ!それを今から説明しようとしてるんじゃないかっ」
「説明も何も…」
言いかけてオイフェは息を飲んだ。
…確かに、似ている。シャナンの幼い頃に…
もちろん目の前の少年がシャナンのはずが無いのだが、好奇心旺盛な発明家の血が少年の説明を聞きたがった。
そして
ゆっくりと、少年は話し始めた―