「これはーーーッ!」

大きな声が二階から響いたのに、リビングでくつろいでいた山本と雲雀が何事だと上を見上げた。
うるさいな。ビールを煽りながら呟いた綱吉がチッと舌打ち。今からあいつブン殴って来ますね!と獄寺が立ち上がった時、バタバタとした騒がしい足音が近付いて来る。
相変わらず騒がしい奴だな、と包丁を握る笹川の手も思わず止まった。


「皆さんちょっと見て下さいよ!」

荒々しくドアを開け、やけに興奮した様子の骸が手に持っているものは何枚かの写真。
どうせまた下らないものだろ。ケッと小馬鹿にするように吐き捨てた獄寺に対し、クッフッフと自信満々な笑みを浮かべた骸がそれをみんなの前に出す。そこに写っていた人物は見た事があるような、でも少し違うような。


「これは十年後の僕(仮)の姿ですよ!」
「…はあ?」

何言ってんだお前、と写真を取り上げた獄寺がそれをまじまじと見つめる。フサは変わらないが、後ろ髪がやけに長く一つに縛っている。顔もあまり変わったところはない気がする。いや、大人っぽくはなっているが、これは確かに骸本人と言える人物だ。


「今、復讐者で十年後企画と言うものをやってましてね。」

目的の人物の写真を同封し、復讐者十年後企画部へと送る。そしてその人物の十年後の姿を予想し、一週間後にその写真を送り返して来てくれるというものだ。(送られて来た写真はアルバムに入れるなり何なり、思い出として好きに使って下さい。)
以前、綱吉が購入した十年バズーカの派生企画みたいなものだろう。(あの時は間違ってランボに使ってしまったが。)


「もちろん君たちのもありますよ。」
「てめ、俺の許可なく俺に何してんだ!」
「はい、これが獄寺隼人です。」
「これは…!」

渡された写真に獄寺がごくりと唾を飲み込む。
今よりかなり成長した体つきに、大人っぽさと言うよりは色気の増した表情。これが俺なのか!未来は明るいなと一気にテンションを上げた獄寺が骸の手を握り、一緒に踊りだす。
おもしれーな。笑った山本に君のもありますよと骸が写真を手渡し、それを見た山本があんまり変わんねえなーと苦笑いを零す。


「顎に傷が出来てっけど何だこりゃ?」
「復讐者予想だと、道で転んだ時に出来た傷らしいですよ。」
「え?十年後の俺ってそんな感じなの?」

どこで転んだんだ。笹川も山本と同じように男らしく、そして逞しく成長しているが顔などに目立った変化は見当たらない。今よりかなり筋肉がついているな!と、人と少し着眼点が違うが笹川らしいと言えば笹川らしい感想だ。(中身も変わってなさそうだ。)
ちなみにランボの姿は前に見たため、送らなかったらしい。イケメンだったから見ても面白くない、それが本音だけど。


「そしてこれが麗しの雲雀恭弥ーー!」

んー、と写真にキスしようとする骸にすかさず飛んで来たビールの缶が直撃する。びしゃっと頭からずぶ濡れになった骸が飛んで来た方へ恐る恐る視線を向けると、あー手が滑ったと笑う綱吉がひらひらと軽く手を振った。明らかにわざとだけど、それを指摘する度胸はない。
写真は無事だろうな?渡せと手を伸ばす綱吉へそれを差し出すと、くっくっと喉を鳴らして笑い出した綱吉に雲雀が眉を寄せた。


「人の顔見て笑うの?失礼だよ。」
「は、バカだな。あまりにも可愛すぎて笑うしかないんだよ。」

あと、いやらしい。
聞き捨てならないその言葉に、雲雀が綱吉から写真を奪う。まじまじと自分の十年後の姿(仮)を見てもどこがそんなに可愛いのか、そしていやらしいのか。よく理解出来ない。
思わず首を傾げていると、横からひょいと写真を取られる。


「あれ、ヒバリ着物?すげえ色っぽいなー。」
「クフフ、髪も短くなってうなじも丸見え…この流し目の威力!」
「うむ、黙ってると上品な色気がある。」
「そうか?何か女豹みてーだな。」

好き放題に言いまくる四人に向かいトンファーを構えると、慌てながら冗談だってと全員が雲雀から遠ざかる。(いや、決して冗談ではないのだが。)
ランボさんも見ると言い、山本が手渡した雲雀の写真を見たランボが顔を赤くしたまま動かなくなる。ぼーっと、まるで見惚れているようなその反応にはさすがに雲雀もトンファーを向けなかったけれど。


「つーかお前、まさか十代目の写真もあるとか言うんじゃ…」
「あー…まあ、一応ありますけどね。」
「マジ?ツナの十年後とかすげー気になる。」

わくわく、と期待を込めて骸を見つめる獄寺と山本に、こんな感じなんですけどねと見せたその写真。
はあ?見事にハモった二人の信じられないと言う声に、笹川や雲雀もひょっこりと覗き込む。


「何これ。」
「いや、ある意味これは間違ってないぞ。」
「うーん、まあツナだしなぁ…」
「復讐者の野郎!バカにしてんのか!」

何なんだよ。自分の未来の姿に特に興味はなかったが雲雀たちの反応を見ていると、どうもあまり良い姿ではないように思える。
どんなのだ?立ち上がり、骸から奪ったその写真に写る自分の姿。


「…鬼?」
「復讐者からの説明にはただ一言、修羅!と書かれていました。」

何だそりゃ。まるで地獄の中、燃え盛る炎を背後に恐ろしい形相をした鬼の姿がそこには写っていた。
節分はもう終わったのにね。少しズレた雲雀のツッコミに綱吉が笑った。どうやら別に、これを見て機嫌を損ねたという事はなさそうだ。
ま、俺ならこんなもんだろ。何だか納得してるし、まあ本人が良いなら何も言う必要もない。


「ていうか君、いつの間に僕の写真なんか手に入れてたわけ?」
「え?そりゃあ盗撮に決まっ……あ、」
「骸。全裸になって外に出ろ。」

にやあ、と笑う綱吉から放たれる凶悪なオーラ。
今でもこんななのに、十年後なんて一体どうなってしまうのか。


「十年後が楽しみだな。お前ら全員、完璧に俺好みのままだ。」
「君も出来れば人間のままでいてね。」
「どうだか。」


いや、いて下さい。それは全員の願いとなる。





























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