十代目、肩をお揉みしましょうか!ああ、ヒバリと一発ヤった後でな。
十代目、ビール盗って来たんですがお飲みになりますか!今からヒバリと出掛けるからまた後でな。
十代目!あの…!
おい、ヒバリがどこにいるか分かるか?


「不毛だと思いませんか?いい加減。」

空になったグラスをテーブルに置き、小さく溜息を吐きながら苦笑いする骸を獄寺がじろりと睨む。
何がだよと憮然とした表情をしながらも獄寺本人だって何の事を言われてるのか分かっているのだろう。骸を横目で見遣った後、細めた目を窓に向けた。



「おい、腐ったパイナップル。」
「…それは一体誰の事でしょうか。」
「ああ?お前しかいないだろ。」

寝ぼけてんじゃねぇよ。綱吉の持っていた缶ビールを投げつけられ、それを顔で受け止めた骸が震えながらクフフと笑う。(怒りと恐れの混じり合った何とも言い難い気分。)幸いそれは空だったため体がビールで濡れる事はなかったが、骸の心をずぶ濡れ状態にまで落ち込ませるには十分なダメージだった。
床に転がった空き缶を拾い上げ、ティッシュのたくさん詰まったごみ箱へ捨てながら(分別?何それ?)綱吉をちらりと見る。きょろきょろとリビングを見渡してはチッと大きく舌打ちする姿にどうやらあまり機嫌はよろしくない事を察し、さて何事も無ければ良いんですがねと警戒に体を少し固くした。

「獄寺はどこに行ってるんだ?」
「獄寺隼人?」

そう言えばさっきから姿が見えませんよねと骸が携帯を取り出す。発信履歴から獄寺の番号を出し、コールすること十数回。駄目ですね、と肩を竦めた骸に綱吉が眉間の皺をぎゅっと深くさせる。

「あいつ、俺がかけても出やしねぇ。」
「珍しいですね。」
「だからムカついてんじゃねえか。」

生意気だ。唸るような声でそう呟いた綱吉が握った拳で壁を殴る。ぼろりと崩れ、出来上がった見事な穴にひくりと顔を引き攣らせた骸がぽちぽちと素早くメールを打ち始めた。
『沢田綱吉がご立腹です!早く帰って来て下さい!(ノ´;ω;)ノ』
まあ雲雀以外の人間、ましてやあの獄寺が綱吉に何の断りもなく何日も家を空けるという事はまず無い。夕方あたりにでもひょっこり帰って来てお仕置きされるんでしょうねと一人でクフフと笑う骸の背後、荒縄とスタンガンを持った綱吉が佇んでいた。



「とまあ、そんな事があって今日で三日過ぎてるんですがね?」
「うむ…いくらタコ頭とは言え…」
「これはさすがに心配になるよなぁ…」

そうですね、非常に心配です、僕の体が。(お前のかよ。)手首に荒縄の跡を残した骸が、もう何度目になるか分からない獄寺への電話をかける。
『電波の届かない場所にいるか、電源が入ってないため…』
お決まりのアナウンスの声に小さく息を吐いて首を横に振りながら山本と笹川を見ると、二人も固い表情で骸を見つめる。あの綱吉にすら何の連絡もないまま、獄寺と音信不通になって早三日。

「おい、獄寺と連絡は取れたのか?」
「うわあ!?」

いつの間にいたのか、山本の背後からいきなり姿を現した綱吉に思わず大きな声を上げる。
それがまだなんだよなー。困り顔で告げる山本をちらりと見た綱吉がチッと舌打ちをするのに、三人がびくりと体を揺らす。(八つ当たりは勘弁してくれ、マジで。)

「まったく…獄寺隼人がいないと背中も満足に洗えなくて不便です。」
「俺が洗ってやるからタワシ買って来い。」
「すいません全然関係ない話でした本当にごめんなさい。」

床に額を付けて土下座する骸を無視し、綱吉が自分の携帯を開く。イライラとした様子であのバカ野郎がと低く呟いた綱吉のその声に骸が見えないように苦く笑った。
(…完璧に不毛って訳でもない?)
探しに行ってみるか?笹川の言葉に頷いた山本が立ち上がった時だった。ピンポーンと響いたのは滅多に鳴る事のない玄関のチャイム。

「おーい!いるなら開けてくれ!」
「この声…」

ヤブ医者が何の用だ。殺気を放つ綱吉がぶつける勢いで乱暴にドアを開けると、それと同時にどさりと転がり込んだ(と言うか投げ捨てられた?)のは、ここ三日間ずっと行方を探していた獄寺だった。床に思いきり落とされたにも関わらず、ぐうぐう寝息を立てている。

「あー最悪だ。何で俺が男なんか担がなきゃなんねーんだ。」
「どういう事か説明して消えろ。」
「…相変わらずだなぁお前は…」

やれやれと面倒臭そうに説明するシャマルから聞くと、事の発展は三日前。
一人で大勢を相手にしたらしい獄寺がボロボロになって倒れているのを仕方なく保護→治療費として獄寺の稼ぎを強奪→ふざけるなと暴れる獄寺にとりあえず静まれと睡眠薬→意外と効果が強くて目覚めないまま時間だけが経過→いつまでも置いておけるかで強制送還→今。

「その睡眠薬、俺がこの間お前に頼んだやつより強いのか?」
「まあ新作だしな。」
「後でまた持って来い。買ってやる。」

話の中心はすっかり睡眠薬に持って行かれてる。(と言うかちゃっかり恐ろしい発言してないか?)
山本と笹川が眠ったままの獄寺を担ぎ上げたのを横目で確認した綱吉が、そのまま俺の部屋へつれて行けと笑う。


「どこまでなら起きないか実験するか。」

うわあ…。
恐らく最悪な目覚めになるであろう獄寺を哀れに思いつつも、きっと綱吉大好きな彼は律儀にこう言うんだろう。
ただいま戻りました!十代目!!
そして次に続くのはきっと悲鳴だ。(千円賭けたって構わないぞ。)































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