PINKCAT2

□Too,Much
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「ボクの趣味って何だか知ってる?」

「えっ……趣味…ですか??」

「結構今まで教えてたんだケドなァ……」


突然趣味は何でしょうと言われても困る。

大体が普通の人に聞かれたって、パッと答えられるものでもないと思う。
しかもクライアント自身が謎と不思議の塊な人だから、僕には益々もって分からない。

皿の上のリボンといい、この妙な質問といい……言い知れぬ不安の中で、心臓は徐々に心拍数を上げてゆく。


「アダムとイヴはエデンの園」

「……?」

「動物達はノアの方舟」

「???……あのぅ……」

「キミは選ばれたんだよ、ボクに」


何と答えていいものかすら分からないから、やっぱり僕は黙ったままで俯いた。
目線ばかりがウロウロと泳ぎ、皿に盛られた色とりどりのフルーツを映し出す。

そんな居心地の悪い時間が暫く続いた後に、カチャリと金属音がして。
その渇いた音にビクッと身を震わせて、恐る恐るその音に視線を向けた時……喉元にヒヤリと冷たい鉄の感触がして、足先から脳天へと一気に鳥肌が駆け上がった。


「ボクの趣味は創造?……いや、『造替』なんだよ、たぶん」

「ひ……ッ―――!」

「血肉のササゲモノにはちょうど飽き飽きしてたトコ………」


黒革の手が握るフォークの尖端は、震える僕の喉仏に宛がわれていて。

クライアントの眼は大きく瞳孔が開き、まるで暗く深い井戸の口のように変貌して、僕の顔をジィッと眺めていたのだ。


(怖い―――!!)


専属顧問として契約を結んだ時も、こんな夜の理不尽さに反抗した時も、クライアントはこんな表情をしていた。

無情の目……まるで昆虫が獲物を捕らえた時のような、そんな色。


「だから色々遊んで試して、デコレーションなんかして……さ」

「…………ッ!…ゲホッ!!」

「遊ぼうよ、ボクと」


その尖端でプツリと喉仏を押され、僕は噎せ込む。

涙目で次に見た時にはその表情は消え、クライアントはニッコリと笑っていた。


黒革の手からフォークは消え、代わりに赤いリボンの先がエアコンの風にゆらゆらと揺れていた――――



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