【Extra## Collection】

□【Confidence】
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巌徒海慈があの牙琉霧人をウチに埋め込んだのは、オレ達の動きを監視させる為と……万一の時に備えた予防線という所だろう。

何れにせよ、厄介なモンに間違いはないが。


「クッ…!二本足のカメラが歩き回る事になる……そういう事さ」

「警戒の為、当分の間は監視の目を緩めず、外部接触を絶ち行動範囲にも制限を持たせるつもりですが―――やむを得ない事情で月に2回、外部接触を計る事となっています」

「あァ……ソイツはオレの耳にも届いちゃいるが……運び屋はシロか?」


東谷は霧人に対し、かなり警戒心を抱いているようだった。

普段の仏顔に時折、もうひとつの表情が浮かんでは消えている。


「いえ。巌徒海慈は運び屋として、牙琉霧人の弟である『牙琉響也』を指定してきました」

「クッ!確かに……ソイツはチョイと面倒だな……」

「あの兄弟は言わば『角行』と『飛車』―――相対的に動く事で、脅威にも成り兼ねません」


幼い頃より様々な輩達と接触した経験を下積みした東谷は、人間の本質を見極める事に長けた男だ。自らの周囲を地固める幹部人選もそれを物語っている。

東谷はどうやら、牙琉霧人から余程強い危険性を孕む人間であると読んだらしい。
同じアンノウンにしてもあの『虎』に対しては、自らが罠に陥れられた時にでも、このような様相は一切垣間見せなかったのだ。


「二人で一つの完全体………フィクサーには向かねぇタマだが、警戒には値する、か―――」

「………お任せ頂けますか?」

「あァ……頼む、東谷」


近付く嵐の予感に、幾つもの修羅場をかい潜り生き抜いてきた男は、自ら を前面に据える形を望んだ。

面倒を掛ける……と贈った言葉に、東谷は目尻に深い皺を浮かべ、薄く微笑む。


「クッ!不良中年の子守も大変だなァ、東谷?」

「黒龍は義にて逝く―――私は総代の背を守る事を誇りに思います」




薄墨のような月に向かい、籠の中の夜鳴鳥(ナイチンゲール)が静かに唄う。

それは静寂の中に明日を殺すような声だった―――



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