【Extra## Collection】

□【Person who laughs】
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『キミの【焼き尽くす捧げ物】は常に、ボクの前に置かれているんだよ……ソレは知っていたかな?』

「クッ!平和が永遠に続くといった男が撃たれた時……アンタは黒い腕章を付けたんだぜ?神の愛や人権もあったモンじゃねェ―――偶像の真似事なんざ余所でやりな」

『…キミはマラの苦い水をも好むモーセだ―――黙示された意味を解き、魂を腐らせてごらん?そして選択すればイイ……』


《選択》という言葉に、ザワリとした悪寒が走る。それは単一を意しないからだ。

次に発するべき言葉を唇が見失った時だった。
忌むその声が最後の示唆を告げ、強化ガラスが一瞬にして巨大なモニターと化す。


『ボクの慈しみに生きる者と、告白を生贄として契約を結んだ者―――《ルハマ》と《アンミ》で彼等は今、【和解の捧げ物】となっているよ』

「!!!!!」

『割れた海の路の先に、キミはどちらを目指すのかな……神ノ木 荘龍?』


遠隔操作により映し出されたのは、御剣と成歩堂の姿だった。

淫を孕む虚ろな眼差しがゴドーの視界に飛び込み―――最後の言葉と共に、その映像も幻の如く一瞬にして消失する。


「野郎―――!!!」


通話内容の所々に、『焼き尽くす捧げ物』の意が拡散されていた。

嘲笑を残す携帯からのトーン音を耳にしながら、苦々しいそれらを反芻し思考の深淵へ精神を集中させる。



《ルハマ》―――憐れられる者

《アンミ》―――わが民



成歩堂が巌徒と『専属顧問弁護士契約』を結んでいるという事が、この時点で決定的なものとなってしまった。

不穏な動きを続ける御剣を按じ、己が契った闇の力で密かに情報網を張った中での『訃報』のひとつだったのだ。



《マラの苦い水》―――珈琲

《和解の捧げ物》――― 酬恩祭



思考を張り巡らせながら、それら詞を鍵とし、意図のパズルを読み解いてゆく。

故意的に服毒され蝕まれていた二人の姿。
何れかを選択せよと、嘲笑う声。

この世界のからくりが――――そして、知るもの全てがこうした集約を見せ始めるのならば。



(見殺しになんざしねェ―――奪い返すだけだ)



思考の淵から帰還したゴドーは、辿り着いた答えと共にその場所へと向かうため、局長室を出た。

ある助言者に連絡を取りながら。



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