【Extra## Collection】
□Darkness of the mind
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「さぁ……キミの待つ『命の糧』を帰してアゲたよ」
過去の体裁から、無垢さを失った若い獅子をモニターは映し出す。
彼は憂鬱の火種を吸い、自身の闇の色を片手に、持て余した時間を過ごしていた。
ボクには、キミのそんな気持ちが手に取るように良く解る。
地獄の業火の様なこの薔薇の赤は、そんなキモチだろうから。
ただ……ザンネンな事に、彼にはソレが見えない。だから、あの白い肌に枯れたアネモネを刻んだ。
キミが見付け易いように。
「英雄はミンナ負ける為に生まれてくるんだよ―――?」
指先でコツコツと、その姿を突き、モニター越しの彼にそう教えてあげた。
その身体を流れる生命の水が沸騰する瞬間、深い愛憎に満ちたショーが始まる。
十の頭を持つ獅子はまだ若くて未完成―――
でも、キミはボクの魂にとてもイイコ、だ……。
EXTRA##
『Dark to dark』
「何をしてきたんだい、ボウヤ?」
「プライベートな事に答える義務は無い」
執務室に戻った御剣は怪訝な表情を浮かべ、ソファに腰を据えたままのゴドーを少しばかり睨み据え、その後ろを通り過ぎた。
重密な狩魔の正装を脱ぎ、クロゼットへと納めた途端、フワリと舶来の香りが背後を捕える。
「報復の臭いが漂ってるぜ?鼻につく、クソのニオイだ……」
「……離せ、神ノ木」
「この小部屋にチェックインして……オレは世界中の重力と戦っていたと、ボウヤは知っていた筈だぜ……?」
閉じられたクロゼットの扉に御剣を押し付けるように、ゴドーは身体を重ね、片手で腰を抱く。
御剣は身を攀り、振りほどこうと抵抗するが―――既に力は底を尽きかけていた。
肩を抱く手は、顎を撫で細い首筋へと移動し、
腰を抱く手が下肢へと愛撫を始めると、その唇から深い吐息を漏らした。
「……離せ……ッ!」
「スキャンダルとクズにまみれたボウヤ……アンタはオレのモンだ――」
ゴドーはその首に巻かれたクラバットを解きながら耳元へと囁くが……現わになったその素肌を目にし、動きが止まる。
それは、醜い指の跡。
枯れたアネモネの、花弁―――。