【Extra## Collection】
□idea―イデア―
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「クッ!やっと笑ってくれたな……まるほどう」
「え……いや、突然だったから僕びっくりして……そのぅ……」
「まァ、いいだろうぜ。オレはそれで満足しちまったんだからなァ」
クシャクシャとその髪を撫でると、成歩堂は恥ずかしげにゴドーを見た。
瑠璃の瞳に映り込む己の姿に苦笑いしながらも、久々にそんなコネコの柔らかさを堪能したいと思い……マスクの下からその場所を模索する。
しかし。
それを遮る言葉を成歩堂は口にした。
今までの経験からいって、全く予想出来なかったその一言に……ゴドーにズキリと心の痛みが走る。
「あの……僕、これから行かなくちゃならないんで……すみません」
「―――――。」
それは淋しそうに……しかし、妙な強がりを見せる成歩堂。
今まで培ってきた何かがゴドーの中で音もなく崩れ落ち、茫然とその詞を受け止める。
(どうしちまったんだ……アンタは…)
唐突に沸き上がる怒りにも似た『苛立ち』……それは今までに経験した事のない、感情の波だった。
千尋を失ったと知ったあの時の憎悪。
擦り寄っては温もりを残していたその姿。
その全てが混濁し収拾がつかない脳内から、無意識の指令が発せられる………。
「あ…ちょ、ゴドーさん!!痛――――!」
「………………。」
ゴドーは成歩堂の腕を掴み、引きずるようにして、倉庫代わりとなっている小部屋へと身を滑らせ……ドアを閉じる。
自分でも何を馬鹿な事をと思うが、ゴドーは成歩堂に襲い掛かるような体制となっていて。
埃臭く幾分薄暗い室内。 困惑した成歩堂の表情をマスクの光が照らし出している。
柔らかい頬を包み込みながら、二つに割れたままの唇すれすれに……意識外のとめどない言葉が漏れ出した。
「オレは……アンタがあの野郎に抱かれてるなんざ知らなかった」
「!!……そ…っ……それは……」
「何故黙ってた……コネコちゃん?」
「………だって……あの……」
「しょうがない……か?どうせ何も出来ねェと…思っていたからかい?」
「そ……んんっ…ふっ……ん」
「だから、オレから離れていくのかい―――?」
問い掛けたその答えを求めるように、滑らかな口内を隅々に舌でまさぐり出す。
全くの無抵抗な成歩堂に自分は舌を絡め、次第に上がる吐息と熱を感じ、自画自賛の陶酔をしている―――。