【Extra## Collection】

□Crimson Rose
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7月の
 土曜日の月夜
   おだやかな
      青い海

ああ、コレは
絶望の、蒼だ―――――





EXTRA##
 『Drifter's ballad』






検事局長に任ずる―――



こんなモノはいらなかった。今欲しいものは、斜め後ろにあるのだから。

席がまた、こんなにも離れてしまったし。
執務室も、また。

それでもキミは相変わらず、凜としたままで表情を変えない。
自分には全く関係ナイと言うように。

キミはボクの横に居て欲しいのに、何でそんな所に銅像のようにつっ立っているんだろう。


長い辞令式典。

無駄な時間を過ごす哀れな部下たち。

終わったら、屋上に行こう―――狩魔クンと一緒に。








「何用か、厳徒」

「局長直々のお呼びダシ―――悪くナイよね?」

「………フン」


二人きりで居られる時間は、こうする以外にもうないと知っている。

でもこうしないと、キミはどんどんボクから離れて行ってしまうから。

完璧を手にする為に捏造する若さは、キミにはもうナイ。
だから権力が必要な訳で……だからボクはこんな風になっただけだった。


本当はキミと一緒に、ずっと上級検事を演じていたかったのだけれど。

信ちゃんと闘いたかったのだけれど―――――


「ね、まだ気持ち変わらナイ?副検事局長のイス」

「その様な場所になぞ、我輩の高みは無い。あの裁きの庭に狩魔の名を永劫なる誉れとする事こそが、全てであるのだ」

「愉快なのになァ……キミが居てくれたら、さ」

「貴様の戯事に興味なぞ無い。失礼する―――」


キミは、ズルイ。

何を用意しても、また、興味を示さないフリをする。

信ちゃんを永久にしてしまってから、背徳みたいなモノで自分を閉じ込めてしまった。

そして、ボクを憎んでる。
ボクが、信ちゃんを憎むように―――――


「でもね、ボクはこれで中々シツコイんだよ、狩魔クン?」

「フ………我輩は狩魔の後継者を手にしたのだ。貴様はその小賢しい椅子に座りながら、永遠に下らぬ夢の続きを見ておれば良い、厳徒よ」

「そうさ。ずっと夢みてる。たった一つの夢………ボクが、キミを征服スルことを――――ね?」


フン、と鼻で嘲笑しながら、狩魔クンは杖をつき背を向けた。

時間がボク達を笑いながら、遠ざかり、追い越して、大好きなその柔らかな髪も白く染まってしまった。

風が、その白檀と遠い何処かからの雨の匂いを運んで、ボクを狂わせ、キミをさらってしまう。


(方法ガ、必要ナンダ………)


ボクは、その時決めたんだ。

キミを手に入れる為に、あんな感情は棄ててしまおうと。


ソレは心を固く、冷たく強くする手段。

泣かない。
叫ばない。

絶対に開かないと知っている扉を、何時までも叩いたりはしない。

カケラ程の情愛も残さない。


キミを手に入れる為なら、ボクは何にでもなれる。冷たい、機械のように。


そう、インプットしたんだよ――――知ってた?



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