【Extra## Collection】
□『Evangelist』
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人生には
ふたつ意味がある
絶望を抱きしめる事と
その絶望にと刃向かう事だ――――
EXTRA##『Evangelist』
死刑囚遺体安置場に於ける調査介入は、現時点ではほぼ絶望的といえた。
巧妙に仕組まれた『公と企』のスパイラルに、自身の権威は焼け石に水といった現状だ。
(まァ……そう簡単にはいかねェだろうぜ)
裏社会の情報収集にも未だ時間を必要としている。
また、あの僅かな糸口が仕組まれたものであるとも分かっている。
――だからこそ、このように強行的な手段に出る必要があったのだ。
(時間……か)
指定された場所は、華やかな街の裏側にある小さな料理店。
妙ないわくが有るというその店の扉口で、ゴドーは闇にジプシーを放ち、扉を押す――――。
「やぁ、神ノ木ちゃん!泳いでる?」
「―――ゴドー……さん…!」
SPに通された店内奥の個室。入室するなり視界へと飛び込んできたその光景に、ゴドーは眼を歪ませていた。
(まるほどう………)
今の自身が最も忌む者の膝上に、最近はめっきりその姿を現さなくなってしまったコネコが居た。
青いスーツに包まれた姿は以前よりも少し痩せたように見える。
驚いたようにして見開く丸い瞳の中に映り込む己の姿に、沸々と逆流する血を感じ、ゴドーは唸りのような言葉を吐き出した。
「コイツは何の冗談か知らねェが―――サプライズにしてはオイタが過ぎるぜ……ジジイ」
「生まれ育ちが何時だって最前線なキミは、マダマダとても若いよ……神ノ木ちゃん…」
慌てたように立ち上がる成歩堂へ、無理に口端を上げ笑い掛ける。
だが、その瞳は俯いてしまい、まるで自分を避けるように床面を見るばかりで。
クスリと嘲笑う厳徒の声を合図に扉は閉まり、室内は不気味な静寂にと包まれた。