【Extra## Collection】

□【徒然なる日々の中で】
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「今日は随分と追い込まれてたねぇ、珍しく」

「フン……証拠以上の証言など存在しないと証明しただけだ。私は完璧だった」

「そうかなァ?結構イイ感じにキミの尻ッぽへ食いついてたよ、信ちゃん」

「何が言いたい」

「……妬けるなァ、ってね―――」



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PrivateRoom_Extra##
【徒然なる日々の中で】
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「や!信ちゃん、泳いでる?」

「法廷でどう泳ごうっていうんです……あ、狩魔検事。先程はどうも」

「…………フン。」


地裁のカフェテラスで御剣信の姿を見付けたのは実際のところ、ボクじゃなかった。
カフェテラスを通り掛かったとき、狩魔くんの鋭い視線が信ちゃんに向けられていたから、ついボクも見ただけのこと。

今日も織り目正しい紺色のスーツに、クソが付く程の生真面目さ。
説法癖が少しうざったいけれど、構う分には存外に楽しい男。それが御剣 信という弁護士だった。

微妙な座り加減のソファー席の奥に狩魔くんを押し込んで、ボクは信ちゃんを対面にしてニイッと笑う。すると信ちゃんは慌てて、黒縁眼鏡を死守すべく退け反るのだ。

そんな中、隣でそっぽを向く狩魔くんは相変わらず不機嫌そうに見えるケド、実はそうでもないことをボクは知っている。


「いらっしゃいませ。今日は巌徒検事のお好きなエルダーフラワーがありますよ」

「じゃあソレと、アールグレイひとつ……あ。あとさ、信ちゃんに苺のショートケーキひとつね」

「また勝手に……いりませんよ、ケーキなんて!」

「ふぅん……地裁のケーキなんて自分の口には合わないってコト?ああ、酷いこと言うねぇこの弁護士〜」

「違います!そんな意味で言ったのではなくて……」

「ええっ!?そうなんですか?酷いわぁ、弁護士さん」

「ああもう……分かりました!頂きますよ、御好意に甘えます!それでいいんですね、巌徒さん!!」

「アハハ、さすが信ちゃん、男らしーね!じゃ、それでヨロシク」

「はい、かしこまりました」


これは当然の流れ。このウエイトレスはボクに好意を持っているから、援護してくれる事は分かっていた。

そんなウエイトレスを味方に信ちゃんを言いくるめると、狩魔くんの眉根がピクリと動く。ボクが信ちゃんをアッサリと折れさせた事が気にくわないらしい。

ああ、わかるよ。
だってボクも今、同じ気持ちなんだから。


「巌徒さん、いい加減ちゃん付けで呼ぶの止めてくださいよ……恥ずかしいじゃないですか。第一、普通は苗字の方ですし…そう思いませんか、狩魔さん?」

「フン!下らん!呼び方なぞ、どうでも良い!!」

「そうそう。呼び方なんてどうでもイイんだよ、信ちゃん」

「全く……お二人に結託されたんじゃ、私は到底勝ち目なしですね―――」


深い溜息と苦笑い……しかし、それ以上の反論はない。狩魔くんがこんな弁護士のどこがいいのか、ボクには未だに良く分からないままだ。

構うと面白くて、人がいい……ただそれだけの男なのに。



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