ちよこれいときす
「準サン、久しぶりにグリコやろうよ」
屋上で昼食を食べおえて教室にもどろうとしたとき利央はそう言った。幼い頃よくやったその遊びが急になつかしくなった準太は、二つ返事で承諾した。
「じゃあいくよ」
「じゃーんけーん」
「ほいっ!」
利央はグーで、準太はパー。よっしゃあ!と反射的に準太は叫んだ。この遊びのすごいところはいちいち子供みたいに騒いでしまうことかもしれない。
「パ・イ・ナ・ツ・プ・ル!」
準太は楽しそうに言いながら階段を一歩ずつかけおりる。そしてくるりと振り返り、またじゃんけんをする。少し遠くなった準太にグーで勝った利央は、意気揚々と階段をおりた。
「グ・リ・コ!」
グリコって字数短いからなかなか進まないよなァと準太が負け惜しみのように意地悪に笑う。しかしその次もまた利央がチョキで勝った。利央は少し考えてから、歩きだす。
「ちょ・ォ・か・わ・い・い・じゅ・ん・さ・ん!」
「あ、お前何勝手に字数増やしてんだよ!」
「だって早く進みたいじゃーん」
いたずらそうに笑う利央が意外と遠くの方にいってしまい準太は負けられねェ、と闘志を燃やした。じゃーんけんほい、と声をかけると準太がパーで利央はグー。
「っしゃあ!ナイピ俺!」
「野球じゃないんだからァ」
「いくぞ。パー・マ・ネ・ン・ト・り・お・う!」
「ちょっとォ、悪口ィ?!」
パーマネントで字数をかせいだ準太は利央よりも5歩先をいく。
「うし!準サン、勝負!」
「じゃーんけーん」
ほい!
「…やったー!」
手を挙げて喜んだのは利央の方で、準太は自分の出したグーを思いっきり睨んでしゃがみこんだ。
「へへーいくよ!
キ・ス・し・た・い・な!」
そう言いながら利央は準太の横を通り過ぎておりていった。何を言われたのかすぐにはわからなかった準太は数秒後、自分の顔が耳まで真っ赤になるのを感じた。
とん、と準太の1歩先に舞い降りた利央が振り返る。階段の差もあって普段は利央の方がすこし高い目線が、今はちょうど同じくらいだ。
「ね、しよーよ」
「いや、りお」
う、という準太の言葉は言う前に利央の口のなかに呑み込まれてしまった。驚いて目を見開く準太に利央はキスをしながら、ふ、と笑った。
1段上にいる準太の腰に利央の腕がからみつく。居場所を失った準太の両手はしかたなく利央の頭を抱きしめた。
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