text

□そのあとは君に誓いのくちづけを
1ページ/1ページ





えーと、違う、そうじゃなくて俺は、。


伝えたい言葉はたった一つで、あぁでも言葉に出来ない悔しい情けない伝えたい。伝えたいとは思うんだだけど伝えられないんだ。


なんでかって答えは簡単。この想いを否定されるのが怖くて怖くてそりゃもうどうしようもないからさ。




「ねぇ準太まだー?」

「・・・ん、まだ」

「うぅー。早くしてー。期限決めておくんだったぁ」




いや、もう本当は決まってるんだけど。でもそんな風にそれを利用してもいいのかと少し思ってみたりもするんだ(ほんとは逃げてるのに違う理由を結び付けてみたりするよ)。




「野球部のエースになったお祝いなんだから」

「うん」

「準太のほしいもの、早くー」

「あー、うん」

「ほらさっさと決める〜もう3日目だし!そろそろ決まってるんでしょ?」

「あー、そうだな、えーと」

「はっきりしろぉ」




うん、俺もそう思うよなんてそんな情けないことたとえ思ったとしても君に伝えるわけにはいかなくて。あぁでも決まってるんだ。答えは決まってるんだ。ほしいものなんてずっと前から決まってるんだ。でももし俺が神様だったとしてもそれは手に入らないような気になるそれはやっぱり君のせいだけど。いや俺のせいなのかもしれない。だってだって俺は、君が、。




「・・・うん、無理だ」

「え、何が」

「やっぱ無理だわ。俺のほしいものなんてお前、無理」

「なっ失礼な!そんなにお財布厳しくないよ!・・・多分!」




俺がほしいのはお前一人なんだよばーか!とさけべたらあぁもうどんなに楽だろうか(できない自分に嫌気がさすよ)。


うん、そんな勇気がない自分に乾杯。自分にドンマイ。あぁいいさ俺は俺のペースでなんとかするんだから(逃げ道は何通りもあるんだね意外だよ)。




「・・・じゃあ」

「うん、何!」




意気込む君にちょっと失礼か。いやもうそんなの関係ない俺が満足できればいいんだきっと(といいつつきっと満足なんてできやしないのさ)。

俺は右手を彼女に差し出す。あぁ何かって?不思議がる君。「え、どういうことなの?」って顔に書いてあるよそんなところもかわいいけどさ。




「・・・握手」

「握手?」

「ん、握手」




怪訝そうだったけれど彼女はおずおずを右手を差し出して俺の手に触れる。ドキン。その瞬間胸が大きく高鳴るだなんてあぁ俺はどういう神経でできているんだろう。




「・・・準太」

「ん」

「・・・これが、ほしいもの?」

「うん、まぁこれでいいよ俺」

「・・・そう?」




はいちっさい俺にドンマイ。今なら罵声もちょっとなら受け入れるよ。負けず嫌いな俺はどこにいったのかこんなにも情けないなんてちょっと自分が嫌になるね。




「・・・。・・・この前の試合の準太ね」

「ん、あぁ、日曜の?お前見に来てたよな」




手は握り合ったまま、彼女は俺をじっと見つめて言葉を零す。日曜の練習試合。初めて俺が試合でエースとして投げたあの日。




「うん。あの日の準太、やっぱかっこいいなーって思ったよ」




・・・。




「・・・あ、・・・そう」

「何その反応ー」




・・・・・・・・・俺今なら死んでいいかもしれない・・・と思う自分は相当こいつに嵌ってるわけで。うわやばいかもしれない人として。

こいつは馬鹿でアホでふと見ればドジ踏んでるようなやつなのに(そこがかわいいとか思う自分はやっぱり相当)、あぁもう俺そんなヤツがこんなにも好きなのか。





「高瀬準太くん」

「今度は何」

「・・・これは、オマケ」





ぽつりと零されたその言葉とほぼ同時彼女の手のひらが離れ俺の右手はふらりとさまよう。・・・けれど、次の瞬間にはピタリと固まっていた。

・・・彼女の腕は俺の背中にまわされていた。・・・英語で言う、・・・ハグ?(わざわざ英語にする意味はあるのかという質問はもうあえて受け付けない)






「・・・え・・・」







間抜けだドンマイ俺もうしらねぇよばーかどうにでもなれ!何言ってるかさえもう自分でもわかんねーよ!







「準太、エースおめでと」






さまよう手のひら。ぎゅうっと君は俺をこれでもかというくらいに抱きしめる。それに合わせるかのようにぎゅうぎゅうと俺の胸は締め付けられる。君にここまでされて俺はさらにこの腕から逃げるだなんて?とんでもないありえねーよ、もう逃げるとか情けないこと言ってんなと君は言いたいのか。いい加減にはっきりしやがれとか、君はそう言いたいのか。違う言葉を望んでいるとそういうことだろこのハグの意味は勝手に解釈させてもらうことにしよう。あぁそうかならもう俺しらねーよホントに。どうにでもなればいいんじゃない?その時君が無事でいるかなんて保障はまったくないけれど純白の君にそろそろさよならバイバイ(汚れるくらいの覚悟はしておけよ)。




じゃあ手始めに。








ねぇお姫さま抱きしめ返してもオーケーですか。

















(俺が神様だったらきっと手に入らなかったと思うんだ)












おひめさまって言っちゃうくらい愛しちゃってんだ準太!






[戻る]
[TOPへ]

[しおり]