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□ぎゅっと君に
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夜の空にはキラキラと星が輝いていて、生暖かい風が私の頬を撫でては通り過ぎていく。


もう色が青なのか灰色なのか良く分からないベンチに座りながら、私は彼榛名元希をじっと見つめていた。
視線の先にいるあいつはそんなの気にもしないで汗を流しながら自分の世界。


彼女の私を放っておいて、野球の自主トレ中だなんて(ある意味病気ですよ、榛名君?)。




「そんな榛名だから好きなんだけどねー」

「お、何つった?今」

「・・・なんで聞こえるのよ」




ボソっとつぶやいただけなのに。榛名は自主トレに集中しているからと思っての一言なのに。


むかつく。なんかニヤニヤしながら私を見つめてる。
どうして彼の耳にこうも都合よく届いてしまうのだろうか(まぁ榛名だからという理由で片付けてしまえるようなことだけれど)。




「ま、あとちょっと待ってろよ」

「これ以上待てっていうの?」

「ん。あと30分くらいじゃねーかな。多分。早くて」

「女子高生にこんな暗くなる時間まで待たせるなんて」




ひどいよね、とは言わなかった。だってひどいだなんて思ってないもの。
ただちょっとだけ。野球に嫉妬してみたかわいい一言じゃないですか(これも言葉にはしない。だって“かわいい!?”と復唱されて絶対に笑われるのだから)。


ツン、と榛名に向けて首を横に向けてみせる。榛名がトレーニングをやめる気配は当たり前だけれど、無い。




「ばぁか。だから待ってろっつってんだろー」

「何よ」





チラリと横目で榛名を見ると、そこにはクスクスと笑っている彼がいた。







「こんな時間にお前を一人で帰せるかよ」








キュン、と胸をつく音が鳴る。


君が私の手を握るまであと30分と少し。それまでに私はこのベンチにずっと座っていられるだろうか。


今だって必死に我慢している。駆け出していって、その背中をぎゅっとぎゅっと抱きしめたい。ほんとは力いっぱい抱きしめたいのに。


ねぇ、早く時間がすぎればいいね。君の笑顔を数センチの距離で見られるといいなと思うのは私だけ?(きっとそうじゃない)






「・・・ずるい」






もし榛名が「帰れ」と言っても私はここに何が何でもい続ける。真っ赤になった頬を隠すようにして私は両手で顔を覆った。


ポツリと呟いた言葉はやっぱり榛名に届いたようで、榛名はニコニコ笑いながら私を見つめている。




夜風は相変わらず生暖かいし、時計の針は私の気持ちをお構いなしに一定のリズムで進んでいく。



あぁもうその笑顔がたまらなくすきよ。
だからこそ今すぐ君をだきしめたいのに!


















(好きすぎてどうにかなってしまいそう!)







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