女王陛下と呼ばないで

□女王陛下と呼ばないで
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そして、それは僕を不安にさせる。


もしかして僕の側に置くことで誠司の自由を奪っているかもしれないから。


本当は誠司は自由になりたいのに僕のお守りをしなければいけないから。と言って側にいるのかもしれない。



と、最近は思うようになってきた。





「タオルは部室にある。取りに行こうとしたら桜がいたんだ」


「じゃあ部室まで取りに行けばいいじゃない!」


僕の心を知らずに言う誠司に少し苛立つ。


「桜のタオルの方が近いだろ?」


そのままクシャッと僕の頭に手を置き、髪を弄る。



すると、外野から歓声があがる。


「やっぱりお二人はお似合いだねぇ」
とか聞こえる。

煩いなぁ。


僕はそちらに視線をやると一斉に静かになる。



「流石は女王陛下だな」


一睨みで観衆を黙らせた僕に誠司は苦笑する。


誠司はあまり多くの人の視線を好まない。

人から注目されるのが嫌らしい。



だから僕は睨んだんだよ。


そう言いたかったけど、止めた。


言っても何にもならないからね。




この四年間で学んだこと。


いくら僕からアプローチしても無駄。

友人である慶介(ケイスケ)が言うには、

「誠司は激しく鈍い」

らしい。


「その上無駄にフェロモンを振り撒く」

とも言っていた。


確かに誠司に惑わされているのは僕だけではない。

隠れ誠司ファンは沢山いるらしいから。


ただ、かわいらしい小兎ちゃんばかりだから皆何も言えないらしい。


だからモテているのにモテない。
という図式が出来上がり、誠司に真実は伝わらず鈍さに拍車をかけているようだ。


とりあえず自覚くらいはして欲しいよね。




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